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100人に1人以上の割合で見られる「自閉症スペクトラム障害」。発達障害の一種で、他者とのコミュニケーションがうまくできず、特定の物ごとや手順にこだわるといった特徴がある。その治療薬として、人への愛情や信頼感を高める「オキシトシン」というホルモンが有望視されている。世界に先駆けて治験を実施している浜松医科大学(浜松市)精神医学講座の山末英典教授に、今後の展望について聞いた。
人への愛情や信頼感を高めるオキシトシン
▽対人関係が苦手
自閉症スペクトラム障害は、自閉症やアスペルガー症候群などと呼ばれる症状の総称だ。相手の表情や声色から心の内を読み取って気持ちを理解することが難しく、対人関係が苦手で、興味や行動が偏るという特徴がある。生まれつきの脳機能障害と考えられているが、原因は解明されておらず、治療法も確立していない。
そうした中、対人コミュニケーション障害を改善し、他者との信頼関係を築きやすくなる効果が報告された物質がオキシトシンだ。脳の視床下部で作られ、下垂体から分泌されるホルモンだ。1950年代に、母乳の分泌や子宮収縮促進などの作用が分かり、陣痛促進剤などとして利用されてきた。その後、男性でも分泌されることや、愛着や信頼などの感情を呼び起こす働きを持つことが報告されている。山末教授は「他者との譲り合いを促し、信頼関係を高める作用がある」と説明する。
▽患者の表情が豊かに
山末教授らは、自閉症スペクトラム障害と診断された成人男性を対象に、オキシトシンの有効性を検証する研究に着手した。この物質を点鼻で1回投与した参加者の脳を磁気共鳴画像(MRI)で調べたところ、偽薬を投与した場合と比べ、人の気持ちを理解したり共感したりする際に働く「内側(ないそく)前頭前野」という部位の活動が活性化していた。また、表情や声色を捉えて、他者の気持ちを理解しようとすることが分かった。
山末教授らは別の研究で、参加者にオキシトシンを1日2回、6週間にわたり点鼻で投与し、参加者の表情を画像で解析した。自閉症スペクトラム障害の当事者は表情が乏しいとされるが、偽薬を投与した場合に比べ表情が豊かになっていた。
現在は、オキシトシンの実用化に向けて製薬企業や国内6大学と共同で治験を進めている(今年11月末まで治験の参加者を募集中)。山末教授は「10年以内には治療薬として届けたい」と意欲を見せている。(メディカルトリビューン=時事)
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