アスペルガー症候群〔あすぺるがーしょうこうぐん〕 家庭の医学

 自閉症に似ていますが、早期のことばの獲得に遅れはなく、知的障害も伴わないタイプの広汎性発達障害(自閉症、その他を含む大分類)です。原因は不明です。
 自閉症と同じように社会性や対人関係の問題があります。表情をつくる、身ぶりで示す、視線を合わせるなどの非言語的なレベルの行動がとれなかったり、仲間がつくれなかったり、他人の楽しみがわからなかったり、一つのことにこだわったり、くり返したりといった特徴があります。また、記憶力に優れ狭い範囲での知識に秀でるといった特徴もあります。
 1歳6カ月検診や3歳児検診では障害を疑われることなく成長しますが、幼稚園や学校生活に入ってから問題が出てきます。友人や教師とのかかわりが前記のように独特で、集団生活というものを理解できず行動がマイペースとなるために、仲間との関係がうまくいかなかったり、孤立したり、いじめの対象になったりします。
 社会に出てからも仕事や対人関係がうまくいかないことがあります。また知的障害、言語の障害、運動の障害などがないために、周囲もそれと気づかず、しかったり、説得したり、欠点を治そうとしたりといった誤った対応をくり返し、さらに症状がわるくなることがあります。したがって、親や教師がこの障害に対する正しい知識をもち、早期に対応することが大切です。
 治療は療育が中心です。決まった方法は確立されていませんが、生活技能訓練や職業訓練指導が試みられています。うつ病などの疾患が合併し、専門的な治療を要することもあります。

(執筆・監修:高知大学 名誉教授/社会医療法人北斗会 さわ病院 精神科 井上 新平)
医師を探す