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不整脈の一種である「心房細動」があると、認知症になる危険性が高まることが分かってきた。国立循環器病研究センター病院(大阪府吹田市)脳神経内科の猪原匡史部長は「認知症を予防するには、心房細動の治療にきちんと臨むことがとても重要です」と話す。
心房細動の治療にしっかり取り組み、認知症予防
▽脳の血流量が減少
心臓は右心房と左心房、右心室と左心室という四つの部屋に分かれていて、左右の心房は心室に、右心室は肺に、左心室は全身に血液を送り出している。心臓が規則正しいリズムで動くのは、右心房の上の方にある洞結節(どうけっせつ)という部分がペースメーカーの役割を担い、電気信号を生成していることによる。ところが、洞結節以外の場所から電気信号が流れたり、電線の役目を果たしている心房の筋肉が変化したりすると電気的異常が生じる。心房細動は、電気的異常によって起こる心房のけいれんである。
心房細動があると、血液を十分に送り出すことができなくなる。心臓から全身に送られる血液量が減少するため、脳への血流量も減る。「すると、認知症の原因物質とされているアミロイドβなどの老廃物は、脳での分解や脳外への排出が滞り、認知症の発症が促進されると考えられます」と猪原部長は説明する。
また、心房細動が生じると、心房で血液がよどんで血栓ができやすくなる。「血栓が脳の血管を詰まらせると脳梗塞になり、血管性認知症を起こす可能性が高くなります」と猪原部長。
特に気を付けたいのは、高血圧、糖尿病、心臓の機能低下、脳梗塞の既往のある人や、75歳以上の高齢者だ。このような人の血管には、損傷や老化が認められる。そこに心房細動が加わると、血栓が生じやすく、脳梗塞を起こしやすくなるという。
心房細動の治療では、脈を整える抗不整脈薬と血栓を防ぐ抗凝固薬の服用を怠らないことが重要だ。最近は、脈を正常に戻すアブレーションという手術療法も可能になっている。さらに、猪原部長は「減塩を意識した食事療法と運動療法が、血管の老化を抑え、脳の血液循環の改善を促し、認知症の発症を回避する鍵になります」と生活習慣改善の重要性を強調している。(メディカルトリビューン=時事)
(2020/02/10 07:00)
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