治療・予防

歩行困難になる例も―強剛母趾 
足の親指の関節が腫れて痛む

 足の親指(母趾=ぼし)の付け根の関節に腫れや痛みがあり、歩行で地面を蹴る(親指を反らせる)際に強い痛みが続く場合は「強剛母趾(きょうごうぼし)」の可能性が高い。進行すると、親指の関節が硬く突っ張って蹴り出しができず、歩行できなくなることもあるため、早期発見、早期治療が大切となる。

 ▽中年女性に多い

 骨と骨をつなぐ関節の表面を覆っている軟骨は、関節にかかる衝撃を和らげる役割をしており、それにより関節が滑らかに動く。軟骨がすり減ったり変形したりして、痛みや腫れを来す病気を変形性関節症という。

 変形性関節症は膝関節や股関節に起こることが多いが、足の親指の付け根の関節に生じるのが強剛母趾だ。親指を反らしたときに強く痛むなどの症状が表れ、親指の付け根の関節に骨棘(こつきょく)という突起ができて、靴に当たって痛みを生じることも問題となる。

 発症原因や危険因子は明らかではない。至誠会第二病院(東京都世田谷区)足の外科センターの野口昌彦センター長は「発症前に母趾を打撲した、くじいたという話はほとんど聞きません。スポーツ選手や特定の職業の人に多いということもないのです」と説明する。しかし、加齢と関係しているのは確かなようで、「中年以降の女性に多く見られます。女性に多い理由は不明です」と言う。

 ▽手術で痛みと動きを改善

 親指の付け根の関節が痛む病気には、強剛母趾のほかに外反母趾や痛風があり、正確な診断が必要だ。強剛母趾は問診やレントゲン検査で比較的簡単に診断できる。一方、外反母趾は親指が内側に「く」の字に曲がるので区別しやすく、痛風は腫れや強い痛みを生じて赤くなるため、鑑別はそれほど難しくない。

 治療法について、「痛みが強くない場合は、すぐに手術する必要はありません」と野口センター長。治療には、痛み止めの内服薬や外用薬、靴の中敷きや歩行時の痛みを和らげる靴型装具を使用する。中敷きや靴型装具は、医師の指示で専門スタッフが作製するという。

 関節の変形や痛みが強くなり、生活に支障を来すようなケースでは手術を検討する。野口センター長は「骨棘や変形した関節を切除して、痛みや親指の動きを改善します。30分程度で終わる手術で、進行する前に行うと効果的です」と話す。

 「強剛母趾が疑われたら早めに専門医を受診しましょう」と呼び掛けている。強剛母趾の診療に詳しい医師は、日本足の外科学会のホームページで検索できる。(メディカルトリビューン=時事)

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