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治療を怠ると失明する恐れもあるのが、緑内障だ。やや古くなったが、日本緑内障学会が2012年に岐阜県多治見市で実施した疫学調査によると、40歳以上の20人に1人が緑内障と推定されており、日本人の視覚障害の原因の第1位を占める。問題なのは自覚症状がほとんどないことで、緑内障と気づかずに車の運転を続けた場合、思わぬ事故につながりかねない。「世界緑内障週間(3月8~14日)」を前に、製薬会社ファイザーが実施した調査によると、約4割が緑内障の症状を把握していないとともに、視野異常による運転への影響を正しく理解している人は約1割にすぎなかった。
4割が緑内障の症状把握せず
◇ドライバー、約1万人調査
調査は2020年1月、週に3日以上車を運転し、かつ緑内障と診断されたことがない全国の40歳以上の男女1万708人を対象にインターネットを通じて行った。
緑内障が目の病気であることは9割近くが知っていたが、正しい症状を知っている人は少ない。この調査で尋ねた(複数回答)のうち「緑内障になると視野が欠けたところが黒く見える」「視力が良ければ緑内障である可能性はない」などといった認識は誤りだ。回答者の約4割が緑内障の症状をきちんと認識していなかった。
「視力」と「視野」は異なる。違いについて「知っていた」68・5%に対し、「知らなかった」は31・5%にすぎない。しかし、視野が欠けることを自覚することはまれだということについては「知らなかった」が64・3%と、「知っていた」の35・7%を大きく上回った。視野に関する理解度は低いと言えそうだ。
視野の欠けの自覚はまれ
◇緑内障と運転の誤解
緑内障による運転への影響がどうかについても聞いた。「信号が見えにくくなる」「左右からの飛び出しが見えにくくなる」「視野が欠けた部分が黒く見えるので運転しにくい」―などの設問では、正しい答えが70%以上を占めた。
ただ、問題だったのは「緑内障と診断されたら運転ができなくなる(禁止)」という、あえて事実と異なる設問だ。緑内障と診断されたからといって、自身の視覚異常を自覚して気を付ければ運転を続けることができる。
だが、この設問に対しては「そう思う」が52・7%、「そう思わない」が47・3%と誤った認識の方が上回った。厳しい見方かもしれないが、運転への影響について完全に理解している人はわずか10・05にとどまった。
緑内障の場合、治療のカギは眼科での定期検診による早期発見に尽きる。このことを知っていたのは58・1%と約6割近くに上ったが、緑内障かどうかを判断する視野検査については「これまでに受けたことがある」は19・8%、「これまで受けたことはなく、受けてみたいとは思わない」14・7%などとなっており、決して意識が高いとは言えない。
緑内障による運転への影響
◇リスク理解不足―専門家
たじみ岩瀬眼科の岩瀬愛子院長は「緑内障に伴う視野の欠損は初期から中期の段階では通常、自覚されることがない。調査では、その事実を認識している40歳以上のドライバーは4割に満たず、また、視野異常の運転への影響を正しく理解しているドライバーはわずか1割と、多くのドライバーがリスクを理解しないまま、日常的に運転している実態が判明した」と指摘する。
「緑内障であっても、ごく早期や初期には運転に何ら影響を与えていない時期もある。また、ある程度視野異常が進行しても、医師から適切な指導を受けて安全な運転を続けている人もいる。怖いのは、自分には全く異常がないと思い込んでいるか、実際は危険なレベルまで症状が進行していることを自覚せずに運転した結果、事故が起きることだ」と強調している。(鈴木豊)
(2020/03/10 07:00)
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