治療・予防

思春期の無理なダイエット 
生涯にわたる健康リスクに

 若い女性のやせ肥満度を表すBMIが18.5未満)の低年齢化と増加が報告され、問題となっている。思春期の無理なダイエットは、生涯にわたり健康リスクを抱える危険をはらむ。思春期のやせがもたらす心身への影響について、政策研究大学院大学保健管理センター(東京都港区)の鈴木真理教授に聞いた。

 ▽心身の発達に影響

 思春期は心身の変化が大きく、「ぽっちゃりしている」などと人から指摘されて傷ついたり、やせを礼賛するメディアなどの影響を受けやすい。

 しかし、体と心の両面が子どもから大人へと大きく成長する第2次性徴期に過度なダイエットをすると、骨の成長に不可欠なカルシウムなどのミネラル、ビタミンDなどのビタミンが不足する。

 また、女性ホルモンの分泌に関わるレプチンというホルモンの分泌が低下し、月経が止まるなどの月経異常を起こしやすくなる。女性ホルモンは骨の健康にも関係するため、この状態が慢性的に続くと、骨がもろくなる、身長が伸びないといった影響も出る。

 「女性は思春期に骨密度が最も増加して、骨量のピークを迎えます。この時期に骨量を十分増やすことができないと、将来、骨粗しょう症を発症する危険性が高まります」と鈴木教授。女性ホルモンは情緒の発達にも影響を及ぼすため、「深い人間関係を築くことができず、大人になってから社会生活に支障を来す場合もあります」と説明する。

 ▽心のSOSかも

 極端な食事制限で急激に体脂肪が減ると、生体の防衛反応で過食するようになり、リバウンドという現象が起こる。

 一方、やせることに執着することで、ストレスに対する感受性が鈍くなるため、つらい部活の練習や勉強もこなせるようになり、学業などの成績が上がるケースは多いという。中には子どもの急激な体重減少を認識しながらも、保護者や指導者が容認してしまう例もある。対応が遅れて摂食障害を発症すると、長期の治療が必要となることも珍しくない。

 鈴木教授は「過度なストレスや悩みを抱えている場合には、特に注意が必要です。1カ月に1~2キロの減量にとどめ、月経を維持できる標準体重の85~90%を下限にしましょう」と話す。また、思春期の子どもがダイエットにのめり込むのは、つらい現実から目を背けたいという心のSOSだとして、「保護者や指導者が早めに気付き、専門医の受診につなげることが大切です」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)

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