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精神科医・森田正馬(1874~1938年)が1919年に考案した森田療法。西洋の精神医学が不安や恐怖の感情の「排除」に努めるのに対して、森田療法はそれらを“あるがまま”に「受容」することを主眼に置いた精神療法だ。森田が精神医学講座の初代教授を務めた東京慈恵会医科大学では現在、付属第三病院に併設する森田療法センター(東京都狛江市)でさまざまな精神疾患患者に治療を行っている。中村敬センター長(同院精神神経科教授)に話を聞いた。
不安や恐怖は、より良く生きたいという生の欲望と表裏一体
▽不安や恐怖の受け入れ
森田療法は強迫性障害、社交不安障害、パニック障害、広場恐怖症、全般性不安障害、身体表現性障害などの神経症性障害に用いられる。これらの患者には内向的、小心、過敏、心配性、完全主義、理想主義などの神経質性格が共通して見られる。神経質性格に基づく「こうあるべき」「こうあってはならない」などの思考が、不安やさまざまな症状への「とらわれ」をもたらすという。
森田療法では、自身の中にある不安や恐怖を「あるがまま」の状態として受容・容認することで、「とらわれ」の打破を目指す。最近では長期にわたる抑うつ症状や、不登校・引きこもりに対しても実施されている。
▽不安の裏には生の欲望
入院による森田療法は4段階で構成される。第1期は約1週間の「臥褥(がじょく)期」で、薄明かりの個室で寝て過ごす。食事を運ぶ看護師や回診に訪れる医師以外と会話はない。インターネットはもちろん、テレビも音楽も本も携帯電話も持ち込めない。中村センター長は「最初の数日は日頃の疲れからよく眠れるのですが、やがてそれまでの自分を振り返って後悔の念にさいなまれたり、先行きを考えて不安にかられたりします。しかしそこを過ぎると、退屈感から活動意欲が高まってくるのです」と説明する。
第2期は部屋の片付けや木彫り作業など一人で黙々と取り組む「軽作業期」、第3期は患者同士が協力して動植物の世話などを行う「作業期」、第4期は外出や外泊などを通じて社会生活に戻るための「社会復帰期」となる。
「不安や恐怖は、より良く生きたいと思う人間本来の“生の欲望”の裏返し。両者は表裏一体です。不安や恐怖と闘う代わりに、“生の欲望”を建設的な行動へ発揮していくことが治療の基本です」と中村センター長。
入院以外に、外来や自助グループでも治療が行われており、中国や英国、カナダなどでも導入されている。国内の実施医療機関は「公益財団法人メンタルヘルス岡本記念財団」の公式サイトに掲載されている。 (メディカルトリビューン=時事)(メディカルトリビューン=時事)
(2020/05/14 12:45)
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