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日本高血圧学会によると、高血圧患者の数は推定4300万人に上る。一方、厚生労働省の調査によると、治療を受けている高血圧患者は2450万人にとどまる。「高血圧の治療は進歩し、効果の高い降圧薬もあるのに、治療が行き届いていない。これが高血圧パラドックスです」と大阪大学医学部付属病院(大阪府吹田市)の老年・高血圧内科の楽木宏実教授は話す。
50代からは定期的に血圧測定を
▽下げないのは危険
高血圧の定義は、収縮期血圧(最高血圧)140mmHg以上、または拡張期血圧(最低血圧)90mmHg以上とされる。高血圧は治療を必要とする病気だ。放置すると動脈硬化が進行し、脳卒中や心疾患を起こすリスクが高まる。国内10件の疫学研究から約7万人分のデータを集めて解析したところ、最高血圧が140~159mmHgの人では、正常血圧の人と比べて脳や心臓の病気による死亡リスクが2~3倍になることが分かっている。
「高血圧と診断されたら、運動、減塩などの生活習慣の改善はもちろんですが、必要に応じて降圧薬を服用し、適切な血圧を保つ必要があります」と楽木教授は強調する。
しかし、高血圧を指摘されても治療を受けない、受けていても血圧コントロールが十分でない人が多いのが現実である。その理由としては、自分の血圧値を日常的に把握していない、血圧を下げる方が危険という誤った情報を信じている―などが考えられるという。
▽家庭での測定が有効
「『降圧薬で血圧を下げると死亡率が上がる』と話す人がいますが、これは『因果の逆転』の可能性を無視した誤った理解です」と楽木教授。例えば、最高血圧が180mmHg以上で、降圧薬を服用し140mmHgにコントロールしている人と、もともと140mmHgで未治療の人を比較した場合、降圧薬を服用している人のほうが死亡リスクが高いということはあり得る。「リスクを高めている要因は、血圧を上昇させ、薬を飲むに至ったもともとの病態にあります。治療によりリスクが高まったわけではありません。治療前と比較すれば、治療によりリスクが低下していることは多くの研究で明らかにされています」
高血圧の治療で重要なのは、自身の血圧を正確に把握することだ。それには、自宅で測定する「家庭血圧」が有用だという。50代以上であれば、高血圧でなくても定期的に測定するとよい。朝と夜の2回測定し、少なくとも5日以上の平均を取って目標を下回っているかを確認する。2019年に改訂された「高血圧治療ガイドライン」によれば、75歳未満の人の家庭血圧での降圧目標は、原則として最高血圧125mmHg未満、最低血圧75mmHg未満である。
楽木教授は「健康診断などで血圧が高いと指摘された、あるいは家庭での血圧で最高血圧が135mmHg以上、もしくは最低血圧が85mmHg以上となった場合は、後々、脳卒中や心疾患になって後悔することのないように早めに受診してください」と話している。 (メディカルトリビューン=時事)
(2020/05/26 11:30)
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