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下腹部痛や冷や汗、下痢、下血などの症状が突然表れる「虚血性大腸炎」。腸管に栄養を送っている血管の血流障害(虚血)が原因で発症し、大腸の粘膜に炎症や潰瘍が生じる病気だ。多くは短期間で回復するが、まれに腸閉塞を起こしたり重篤化したりするケースもあるため、注意が必要だ。
▽自然治癒が多い
虚血性大腸炎は、短期間で治癒する「一過性型」から、症状が長く続く「狭窄(きょうさく)型」、腸管が壊死(えし)する重篤なものまである。高齢者に多い病気だが、若年者の発症もある。
帝京大学医学部付属病院(東京都板橋区)下部消化管外科の橋口陽二郎教授は「多くは発症から1週間ほどで自然に軽快します。下血に驚き、大腸がんなどを疑って来院した患者さんが、検査で虚血性大腸炎と分かり、安心する例も多く見られます」と説明する。大腸がんは、早期のうちは腹痛がほとんどなく、虚血性大腸炎と区別がつきやすいという。
虚血性大腸炎になると、腹部の左側にある下行結腸やS状結腸に虚血が生じやすく、左下腹部が痛むことが多い。「高齢者、糖尿病患者、高血圧などの動脈硬化性疾患の人で発症しやすいと言われます。末梢(まっしょう)の血管がけいれん性の収縮を起こし、血流が悪くなるためだと考えられています」と橋口教授。また、便秘や排便後の強い腸壁の収縮で血流障害が起こり発症する例もある。
診断には大腸内視鏡検査が有用だ。治療の基本は安静であり、鎮痛薬や抗生物質を用いる場合もある。炎症や潰瘍の範囲が広く、出血量が多いなど症状が強いケースでは、腸の安静を保つために3~4日入院して絶食し、点滴で水や栄養を補う。軽症では、自宅で刺激性のある食品やアルコールを避けるなどの食事指導を行うことで軽快する。
▽まれに腸閉塞も
一方、腸の炎症や潰瘍の痕が引きつれて腸管が狭窄を来す人もいる。橋口教授は「狭窄が悪化すると腸閉塞に至り、腸の切除が検討されることもあります」と話す。
また、発症数は少数ながら、腸に栄養を送る太い血管の血流が滞り、腸の組織が壊死する例もある。その場合は、「激しい腹痛や腹膜炎などの症状が表れます。腸に穴が開く、敗血症で死に至るなどの危険性もあり、緊急手術を要します」と語る。そのため「下血などの症状があれば、消化器専門医を受診し、適切な診断を受けることが大切です」と橋口教授はアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)
(2020/05/29 10:00)
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