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脳卒中や交通事故などが原因で脳の言語中枢が傷つき、言葉を理解したり表現したりすることが困難になる失語症。専門的な言語訓練が有効とされるが、東京慈恵会医科大学付属病院(東京都港区)リハビリテーション科の安保雅博診療部長は、脳の言語機能を活発にする「選択的磁気刺激治療」を開発し、言語訓練と併用して効果を上げている。
脳卒中などで引き起こされる失語症
▽聴く、話すなどに障害
失語症は、「聴く」「話す」「読む」「書く」能力の一部またはすべてに障害が生じた状態を言う。まったく話せない状態から、話しづらいが単語の復唱はできる、聴くことが難しいなど、さまざまなタイプや程度がある。
言語に関する機能のほとんどは、脳の左側(左脳)が担っている。左脳の血管が詰まったり破れたりして脳の組織が損傷を受けると、失語症になるのだ。「失語症の原因の90%以上は脳卒中です」と安保診療部長。
失語症は発症後1年くらいが、最も回復する期間だという。損傷した脳の言語中枢の機能が回復したり、周囲が代わりに機能したり、左脳の代わりに右脳が機能を補ったりするためと考えられているが、基本的な言語機能が取り戻せない例も少なくない。
▽磁気刺激で脳機能が向上
そこで安保診療部長は、脳の言語機能を活発にする治療法を開発した。患者の頭部に当てたコイルに電流を流して磁場を発生させ、脳内にわずかな電流を誘導して反復刺激する「反復性経頭蓋磁気刺激」(rTMS)だ。
対象は、単語の復唱ができる軽度から中等度の失語症で、1日2400発の高頻度磁気刺激をする。刺激する部位は、脳のどこが言語機能の修復を担っているかを脳の機能画像で評価して決める。治療中は痛みや苦痛はほとんどないという。同院では13日間の入院でrTMSとともに集中的な言語訓練を行う。
国内でrTMSを受けられる施設は限られるが、4コマ漫画を口頭で説明するといった言語機能検査で改善を示す報告が相次いでいる。発症後早期の治療が効果的だが、発症から1年以上経過した失語症患者にも回復が期待できるという。
安保診療部長は、患者と接する際に心掛けたいこととして、「穏やかな態度で目を見てゆっくり話し掛け、じっくり話を聞きましょう。言おうとしていることを先取りして断定するのは避け、言葉が出ない場合は適当なところで『~のことですか?』などと助け舟を出してあげるとよいでしょう」と助言する。 (メディカルトリビューン=時事)
(2020/06/19 08:00)
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