治療・予防

目の酷使が原因か 
増える角膜上皮障害 東邦大学医療センター大森病院眼科 堀裕一教授

 パソコンやスマートフォンの急速な普及で、目を酷使する人が増えている。画面を長時間注視すると、角膜が乾燥して表面が傷つきやすくなる。すると、異物感や目の痛み、角膜の一部が濁るといった「角膜上皮障害」を発症する危険性が高まる。東邦大学医療センター大森病院(東京都大田区)眼科の堀裕一教授に聞いた。

角膜の効果的なセルフケアの方法

 ▽眼科医の6割が「増えた」

 角膜は黒目(虹彩)を覆う透明な膜で、光を取り入れると同時に、レンズとしても機能している。最も外側にある膜は「角膜上皮」と呼ばれ、角膜を守るバリアーの役割を担う。そこが傷ついたり、剥がれたりするのが「角膜上皮障害」だ。

 眼科専門医101人を対象に民間企業が行った調査によると、6割以上が「10年前に比べて角膜上皮障害を伴うドライアイ患者が増えている」と回答した。「患者の増加とスマホの普及は関係ある」とした人は、約7割に上った。

 調査を監修した堀教授は「スマホなどの長時間使用により、まばたきの回数が減少し、涙の分泌が減ったり蒸発しやすくなったりします。そしてドライアイが進行し、角膜が傷つきやすくなるのです」と説明する。

 原因はほかにもある。「角膜上皮障害はどの年代でも男性より女性に多く、特に若い女性で目立ちます。目のマイボーム腺(上下のまぶたの内側で皮脂を分泌する)を詰まらせるようなアイメーク、まつげの生え際に負担がかかりやすいまつげエクステンション、質の悪いカラーコンタクトレンズなどが関与していると思われます」と堀教授。花粉やPM2・5(微小粒子状物質)なども患者が増える一因だという。

 ▽目を温めると血流が改善

 角膜上皮は新陳代謝が活発なため、通常は傷ついても自然に回復する。だが、修復が間に合わないほど傷が付くと、バリアー機能が損なわれ、角膜が受けるダメージは大きくなる。堀教授は「放置すると、光をまぶしく感じて目を開けていられなくなります。目の違和感や痛みがあり、市販の目薬で改善しない場合は、眼科を受診してください。角膜上皮障害はドライアイ以外にもさまざまな原因で起こるため、まずは原因をしっかりと検査で見つけることが重要です」と話す。

 日頃のセルフケアも大切だ。パソコンやスマホの使用時には一定の間隔で目を休め、意識的にまばたきをするとよい。目薬も有効である。

 堀教授は「目を温めて血流を良くすると、マイボーム腺から脂の分泌が増え、涙の質が改善する効果が期待できます。市販のホットアイマスクなどを活用するとよいでしょう」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)

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