コンタクトレンズ 家庭の医学

 角膜に接触したレンズで、目に無害な物質でできています。ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズがあります。
 眼鏡は眼前約12mmのところにあり、このために目にうつる像(網膜像)の拡大や縮小が起こります。網膜像の大きさが両眼で異なった場合、これを不等像視といいますが、ある程度までは頭のなかで像の大小の差を容認します。しかしそれ以上の差が出た場合は、物が二重に見えてしまいますので実際には使えません。左右差は2ジオプター(レンズの強さをあらわす単位)までです。
 たとえば片眼が白内障で水晶体を摘出した場合、水晶体がある目と摘出した目とのレンズの強さの差は12~13ジオプターで、差が大きすぎて眼鏡は使えません。この像の大きさの差は目とレンズの距離があればあるほど大きくなります。その差を小さくできるのがコンタクトレンズです。角膜上にのせるコンタクトレンズでは、水晶体がある目とない目の網膜像の大きさの差は6%程度です。この程度なら頭のなかで一つになり、立体視(遠近感)ができます。
 このようにコンタクトレンズには眼鏡と比較していろいろな利点があります。角膜面の凹凸による不正乱視(乱視)の矯正(きょうせい)ができ、レンズは目の動きと同じに動きますので横目を使った場合でも像がゆがむことはありません。前に述べた不等像視が起こりません。視野が眼鏡枠でさまたげられることもなく、気温の差で曇ったり、雨で見えなくなったりといったことがありません。
 激しいスポーツで走るときに像がゆれたりしませんし、美容上も眼鏡に勝るとの認識が一般的です。
 欠点としては、慣れるまでに日時がかかる、眼鏡よりも扱いかたがめんどうである、異物感がある、角膜に傷がつき、そこから痛みや角膜潰瘍や角膜感染が起こることがある、結膜炎が起こることがある、などです。
 コンタクトレンズは大切な角膜に直接接触するものですから、その扱いには特に気をつける必要があります。ただし、また、その処方や定期的検査は眼科医でおこなわなければなりません。ハードコンタクトレンズは、その名のとおりかたいコンタクトレンズで、角膜の上をよく動きます。この動きが大切で、レンズの角膜面との接触がきつすぎると動きがわるく、レンズと角膜との間の涙の入れ替えが不十分となり、角膜は酸素不足におちいり角膜上皮障害を起こします。病気などで角膜表面に不規則な凹凸ができ、不正乱視になっている目も、ハードコンタクトレンズを装着すると、レンズと角膜面の間は涙液層で埋まってレンズと目が一体化し、ハードコンタクトレンズの滑らかなカーブが目の表面にできるため、不正乱視を矯正することができます。
 ソフトコンタクトレンズは、ハードコンタクトレンズとは異なり含水量が多く、それだけ角膜に対する刺激は少なくなっており、装用しやすいといった特徴があります。大きさはハードより大きく、角強膜をおおいますので安定してあまり動きません。これを角膜疾患や角膜穿孔(せんこう)したような場合の医療用として使うこともあります。ソフトコンタクトレンズは角膜の形状になじみますので、強い乱視・不正乱視の矯正は困難です(強度乱視や不正乱視でなければ、乱視用のソフトコンタクトレンズもあります)。
 最近、コンタクトレンズの材料が改善され、長期に入れたままにしておくことができるエクステンディドウエア・ソフトコンタクトレンズや、手入れの簡単な使い捨てのディスポーザブルレンズが市販されています。現在、国内では使い捨てのソフトコンタクトレンズが主流です。しかしソフトコンタクトレンズも材料が改良されたとはいえ、ハードと同様、眼科医でしっかりと定期検査する必要があることはいうまでもありません。

 アカントアメーバと呼ばれる微生物が原因で起こる角膜感染症がありますが、アカントアメーバ角膜炎を発症した人のほとんどはソフトコンタクトレンズ使用者です。アカントアメーバ角膜炎の原因は、毎日使い捨てにしなければならないレンズを再度装用してしまったり、再装用可能なレンズでもこすり洗いやすすぎなど、決められた取り扱いができていない場合がほとんどです。アカントアメーバ角膜炎を発症すると、治療しても視力に後遺症が残ってしまうこともあります。コンタクトレンズの使用に際しては、使用上の注意をよく守り、定期健診を受けてください。

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