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35度を超える日が続く記録的な猛暑により、各地から重症熱中症による救急搬送の増加が報告されている。特に、気温が健康な人の体温を超える37度を上回ると、熱中症発症の可能性が高まるだけでなく、その症状が生命に関わる危険性も出てくる。熱中症に詳しい医師は「このような気候はもう『災害』と言ってもよい。予防に努めるだけでなく、体調に不調を感じたら早めに医療機関を受診するくらいの対応が必要だ」と訴えている。
国内統計史上最高記録と並ぶ41.1度を観測した浜松市中区で日傘を差して歩く人たち=2020年08月17日【時事】
◇搬送重症患者、大半75歳以上
各地で37度以上の最高気温を記録した8月11、12の両日、救急患者を受け入れている済生会横浜市東部病院には多くの高齢者が重症の熱中症で搬送されてきた。熱中症の患者を多く診てきた同病院患者支援センター長の谷口英喜医師は「搬送された重症患者は屋内にいた75歳以上が大半。ほとんどは意識がはっきりしなくなったり、動けなくなったりしてから救急車を呼んだようだ」と話す。
◇エアコン設定温度に注意
患者の中には、部屋の冷房を使っていた人もいた。谷口医師は「エアコンの設定温度まで室温が下がっていなかった可能性もある。たとえエアコンを使っていても、温度計で室温を確認する必要がある。同じ猛暑日でも、最高気温が37~38度にまで達すれば『災害』と考えてほしい」と話している。
なぜか。気象庁が発表する気温は、風通しが良く、周囲の影響を受けにくい場所で測定されている。日常生活の場面では、地面や周囲の建物からの放射熱、自動車や建物内からの廃熱がこもり、発表された温度より数度は高くなることが多い。こうした状況では体内の熱を放熱することもできず、体温が上昇してしまう。
谷口英喜医師
◇水分補給だけでは限界
谷口医師は「体温が40度を超えてしまうこともある。こうなれば、脱水や意識低下だけでなく、腎臓や肝臓の機能低下、血液凝固作用の異常など多臓器不全の初期とも言える状態に陥ってしまう」と指摘するとともに、「さらにこの状態が長引けば、脳組織までもがダメージを受け、呼吸や心拍にも問題が生じてくる」と警鐘を鳴らす。
こういう危険な状態では、体を冷やしたり水分を補給したりするといった一般的な対策だけでは効果はなく、人工呼吸器や透析などを使った集中治療室での救命措置が必要になってしまう。谷口医師は「水分補給などの予防だけでは限界がある。体調不良を感じた段階で熱中症を疑い医療機関を受診するくらいの警戒が必要だ」と強調する。
(2020/08/20 07:00)
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