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肝機能の障害により黄疸(おうだん)や成長障害などの症状が表れるミトコンドリア肝症は、新生児期に発症することが多い先天性のまれな病気だ。認知度が低く、診断に時間がかかるケースが多い。ミトコンドリア肝症の研究に携わる済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科の乾あやの部長に病気の特徴や治療法などについて聞いた。
早期の発見により臓器を守ることが重要
▽成長障害と黄疸
ミトコンドリア肝症は、2009年に国の難病に指定されたミトコンドリア病の一つ。全身の細胞に存在し、体を動かすためのエネルギーを作り出すミトコンドリアに異常が生じ、成長に必要なエネルギーが十分に作り出せなくなる。ミトコンドリア病の発生頻度は約5000人に1人(20年6月現在で1140人)で、ミトコンドリア肝症はそのうちの1割程度(同107人)とされている。
乾部長らは、千葉県こども病院遺伝診療センター・代謝科の研究グループとともに、ミトコンドリア肝症の中でも特に重症とされる脳肝型ミトコンドリアDNA枯渇症候群の日本人23人を詳しく調べた。その結果、約半数に乳児期の早い段階から身長が伸びない、体重が増えないなどの症状があり、約9割に黄疸や胆汁の停滞が見られることが分かった。また、原因となる遺伝子も明らかになったという。
「健康な子どもは右肩上がりに成長しますが、この病気を発症すると、成長に必要なエネルギーが不足して成長障害を起こします。成長障害があれば、子どもであっても肝機能をチェックすることが重要です」と乾部長。
▽予後が良好なケースも
ミトコンドリア肝症の診断基準は確立されていないが、血液検査で肝機能の状態を示すAST、ALT、γ―GPTの値の異常が6カ月以上続く場合は、この病気が疑われる。確定診断には呼吸鎖という鎖状に並ぶ酵素の活性測定やミトコンドリアDNAの定量検査などを行うため、原則として肝臓の組織を採取する肝生検が必要になる。しかし、肝生検を契機に状態が悪化することもあるので、慎重に検討する必要がある。
重症のミトコンドリア肝症に対する治療は、現在のところ肝移植のみだ。乾部長らが肝移植を行った子どもの長期経過を調べたところ、発症時期が生後6カ月以降の場合では、それ以前に発症した乳児と比べて生存例が多いことが分かった。ただし、ミトコンドリアは全身の細胞に存在するため、肝移植後もミトコンドリアが豊富な臓器を慎重に経過観察する必要がある。
乾部長は「乳児の原因不明の突然死の中に、この病気が含まれている可能性があります。ミトコンドリア病の研究は急速に進んでいます。できるだけ早期に発見し、臓器への影響を最小限にとどめることが大切です」と強調している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/03/08 05:00)
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