治療・予防

気付きにくい「ドライノーズ」
感染症のリスクも(はりまざかクリニック 三輪正人院長)

 体を守る粘膜の乾燥によって起こるドライアイ、ドライスキン、ドライマウスといった乾燥症候群が近年注目されている。このうち鼻の中が乾燥する「ドライノーズ」は自覚しにくく、発見が遅れがちだ。ドライノーズによる全身への影響や早期発見法、予防法について、はりまざかクリニック(東京都文京区)の三輪正人院長に聞いた。

ドライノーズの予防策

ドライノーズの予防策

 ▽鼻粘膜の乾燥が進行

 一年を通じてエアコンなど空調の効いた室内で過ごす時間が増え、温暖化などにより屋外の平均湿度が年々低下していることも相まって、住環境は常に乾燥した状況にある。すると目や皮膚、口腔(こうくう)内、鼻の粘膜などの水分が蒸発して乾いた状態になる。「ドライノーズは患者本人が気付きにくいため、症状が進んでいる例が少なくありません」と三輪院長。

 鼻粘膜の水分蒸散量は加齢とともに増えるが、花粉症やアレルギー性鼻炎でも増加するためドライノーズを発症しやすいとされる。

 水分蒸散量が増えて鼻粘膜を覆っている粘液が極端に減ると、粘膜に隙間なく生えている「繊毛」という毛の動き(繊毛運動)が鈍くなる。繊毛運動は粘液の層に流れを生み出し、体内に侵入したウイルスや細菌、アレルギーの原因となるアレルゲンなどをせきやたんと共に体外へ排出するなどして異物の侵入を防ぐバリアー機能を担う。ところが、繊毛運動が鈍るとバリアー機能が低下して体内に異物が入りやすくなるのだという。そして、感染症やアレルギーを起こすという悪循環に陥る。「花粉症などの治療で受診してドライノーズが見つかることも珍しくありません」と三輪院長。

 鼻の中がむずむずしてはなをかみたくなる、鼻血がよく出る、花粉症やアレルギー性鼻炎の症状が強い場合などはドライノーズの可能性がある。こうした症状が表れたら早めの対処が必要だ。

 ▽セルフケアでバリアー機能を維持

 ドライノーズは鼻粘膜に炎症がなければセルフケアで対応できる。生理食塩水の点鼻、保湿効果のあるヒアルロン酸やグリセリンの点鼻、重炭酸イオン(重曹)などを含有するドライノーズ用スプレー液が有効だ。

 室内で過ごす場合は、湿度に気を配ることが予防につながる。マスクの着用も効果的だ。三輪院長は「ドライノーズにより生じる鼻粘膜のバリアー機能低下によってウイルスなどの感染リスクが高まります。バリアー機能を保つ先手のケア、つまり未病の段階で病気の原因を防ぐ“上流の医療”が何よりも大切です」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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