治療・予防 2024/11/21 05:00
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出産後にうつ症状が表れる「産後うつ」。分娩(ぶんべん)後の情緒的、身体的な要因によって生じるが、鉄分不足も原因の一つになるという報告がある。この報告を行った国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター(東京都世田谷区)の小川浩平医師に産後の貧血治療の重要性について聞いた。
産後うつの一因になる貧血の症状
▽軽い貧血でも6割増
出産後には「マタニティーブルーズ」と呼ばれる情緒不安定になりやすい時期があり、慣れない育児や不眠、ストレス、不安などの心身への負担によって産後うつになる人もいる。産後うつが自殺の原因になる例もあり、妊産婦のメンタルヘルスケアが大きな社会問題になっている。
一方、貧血は気力の低下や全身の倦怠(けんたい)感などを招き、うつの原因になることが分かっている。出産時の出血で貧血になる人が多いことから、小川医師らは貧血が産後うつの原因になるとの仮説を立て、検証するための研究を行った。
研究では、2011~13年に同センターで出産した女性977人の臨床データを解析。その結果、産後に貧血だった女性は、貧血でなかった女性と比べて産後うつの発症リスクが1.63倍だった。貧血の重症度別に見ると、軽度で1.61倍、重度では1.92倍だった。
ただ、出産後に貧血と分かっても、軽度の場合、治療を行わないケースが多いとされる。「産後の貧血治療の開始基準がなく、施設や医師によっても対応が異なるためです。貧血に対する治療がうつの抑制につながるかは今後の課題ですが、貧血が軽くてもうつのリスクになり得るため、放置せず、治療することが重要と考えています」と話す。
▽周囲のサポートも重要
また、貧血の治療を開始できたケースでも、出産後は育児に追われて自身の健康管理が後回しになりやすく、薬の飲み忘れが生じやすいという問題がある。「薬は自己判断で中止せず、最後まで飲み切って治すことが大切です」と小川医師。
産後のメンタル不調が長引くほどうつのリスクが高くなる。だが、症状が軽度だと産後の1カ月健診での発見は難しく、見逃されることが少なくないという。「パートナーとの関係も重要で、サポートが手薄な女性ほどうつになりやすい。1カ月健診後は受診機会がなく、発見が遅れることもあります。軽度のうつは症状が捉えにくく、母親が自ら精神科を受診するケースは少ないのが現状です。医療や地域のサポートとのつながりを保ち続けることが大切です」と話す。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/03/30 05:00)
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