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18歳未満の子どもの全死亡事例を専門家らが多角的に検証する「チャイルド・デス・レビュー(CDR)」の制度化に向け、2020年度から7府県でモデル事業が始まった。事故死や虐待死など防げたはずの死亡事例を発見し、再発を防ぐための取り組みだ。いち早く導入に向けた準備に着手し、モデル事業に参加する山梨県の取り組みについて、県子育て政策課の土屋嘉仁課長に話を聞いた。[聞き手=常田陽子・時事通信社甲府支局]
土屋嘉仁さん
●どのような制度か。
「未来の子どもを救う方法を、きょう亡くなった子どもに聞く取り組みだ。医療や警察、教育、行政などの関係者が子どもの全死亡事例について死因を分析し、予防可能だったのかどうか、可能ならばどのような予防策につなげられたのかを検証する。18歳未満の死亡の4分の1は予防可能とされる。山梨県では18年は30人が亡くなったが、このうち8人の死は防げたことになる。
さいたま市で11年、小学6年の女子児童が駅伝の練習中に倒れ、翌日に死亡した事故があった。家族や学校が原因を検証した結果、児童の名前から『ASUKAモデル』と名付けられた事故対応テキストが作られ、自動体外式除細動器(AED)をちゅうちょなく使うことの大切さが学校現場に広まった。このように、死亡事例を教訓に将来の『防ぎ得た死』をなくしていくことが目的だ。
CDRは米英などで既に制度化され、日本でも成育基本法などに推進が盛り込まれて22年度の導入を目指している。モデル事業を行う7府県は、制度化に向けてどういった法整備が必要かなどを国に提言することになっている」
●検証の流れは。
「県が情報収集を担うことになっている。本県では、県内医療機関が作成して委託先の大学病院が収集する『死亡調査票』、死亡届を受けて保健所が作成する『死亡小票』をそれぞれ提供してもらい、二つのデータを突き合わせる。その上で警察や消防、市町村、児童相談所、学校といった関係機関に照会し、追加で必要な情報を収集する。
その後、集まった情報を用いて多機関検証委員会を開催する。まずはその子どもの死に直接関わった関係者による『コアメンバー会議』で個別検証した上で、匿名化して全体会で多角的な検証や、個別事例の集約、普遍的な予防策の提言を行う。コアメンバー会議の初会合を9月に開き、検証作業をスタートさせている。
強調したいのは、責任追及や犯人捜しのための検証ではないということ。あくまで予防策を考えるための会議だということは、関係機関に繰り返し伝えていく」
●早くから準備を進めてきた。
「関係者間で制度への理解を深め、子どもが死亡した時に円滑に情報を収集できる環境を整えるため、県では19年度からいち早く関係機関を集めた連絡調整会議を開催して周知に努めてきた。個人情報の取り扱いについても、条例で厳しく定められているので、個人情報保護審議会に事業に必要な情報の取得や目的外使用についての承認を得るなどの準備を行ってきた。
他機関が保有する個人情報をどこまで入手できるかが今後の課題となりそうだ。病院との連携はかなり進んでいるが、他の関係機関ともスムーズなやりとりができるよう、調整を進めたい」(了)
(時事通信社「厚生福祉」2020年10月16日号より)
(2021/03/08 05:00)
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