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「学校に行きたくない」
コロナ禍の子どもにストレス

 新型コロナウイルス感染症によって一時、小学校や中学校などが休校に追い込まれた。その後、登校が再開され、「子どもたちの生活は日常に復帰した」と、胸をなで下ろしている保護者も多かったかもしれない。しかし、子どもたちは「学校に行きたくない」と感じているケースもあるなど、保護者と子どもの意識に差があることが医療機関の調査で明らかになった。

 国立成育医療研究センターの調査では、回答した子どもたちの約30%が「学校に行きたくないことがある」と回答している。また、約10%がコロナ禍で生じた生活の変化について、保護者や教師から背景を全く説明してもらっていないと感じていることも分かった。

 同センター「コロナ×こども本部」の半谷(はんがい)まゆみ研究員は「新型コロナの流行が比較的落ち着いている時期であっても、子どもたちの置かれた心理状況は決して安心できないことが見えてきた」と指摘している。

「学校に行きたくないことがある」子どもも

「学校に行きたくないことがある」子どもも

 ◇3割が登校嫌がる

 調査は2020年9月1日~10月31日、高校生以下の児童・生徒とその保護者を対象にインターネット上のアンケート方式で実施し、延べ1万人以上から回答を得た。新型コロナの流行が比較的安定した時期で、9割以上が通学を再開していた。

 しかし、回答前の1週間に「学校に行きたくないことがあったか」との質問に対しては、小学校1~3年生(874人)のうち20%が「ときどき」、4%が「たいてい」、5%が「いつも」と回答。高校生(157人)でも「ときどき」24%、「たいてい」6%、「いつも」7%だった。

 この結果について半谷研究員は「全体でも『ときどき』が19%、『たいてい』と『いつも』を合わせて11%。全体の3割が『学校に行きたくない』と感じている。これは、子どもたちがこの時点でも大きなストレスにさらされていることを示している」と指摘する。

コロナ禍の中で登校再開

コロナ禍の中で登校再開

 ◇起床にも影響

 同じ傾向は、睡眠状態からも垣間見える。「起きられなくて学校に行けないことがある」との回答が中学生で10%に達したほか、全体でも44%が「朝、ちゃんと目が覚めるのに時間がかかる」と答えており、ストレスによる睡眠障害が多くの子どもに起きている可能性を示している。

 ストレスの背景には、保護者と学校の教員との間の意思疎通の問題があるようだ。「学校で授業や行事を変更する理由が説明されているか」との質問に対し、「全くない」との回答が7%、自分たちの考えを聞くための質問などをしてくるかどうかについても、10%が「全くない」としている。

 家庭でも同様で、過ごし方を変える際の説明が「全くない」と10%が答え、7%が自分の考えを質問されることが「全くない」との回答を選んだ。さらに説明や質問の機会について、「ときどき」と「少しだけ」あるとの回答は合わせて30%前後あった。

 ◇保護者「子どもに説明している」

 一方、保護者の側は、子どもたちに説明したり、質問に応じたりしていると考えているようだ。回答では、「全くない」が1%、「ときどき」と「少しだけ」を合わせも30%。全体の7割近くが子どもたちに理由を説明しているとしていた。

 また、「子どもが自由に考えを話せるように工夫しているか」との質問に対しても、「全くない」は1%、「ときどき」と「少しだけ」を合わせても27%。やはり7割以上が子どもの考えを聞こうとしている、と考えている。

 ◇子ども「意見聞いてほしい」

 自由回答を見ると、「子どもがはっきりと意見を言える場所をつくってほしい」(小学5年・女子)、「時間を決めて話を聞いてほしい」(小学3年・男子)といった声が目立つ。

 さらに、「否定から入らず『そういう考えもあるのだ』と1回受け止めてほしい」(高校1年・女子)や「自分以外の考えや気持ちも聞いてほしい」(小学5年・女子)など、保護者側への要望も次々に寄せられた。

 特に、学校については「先生と気軽に話せる環境づくりをすべきだ」(高校1年・女子)、「一方的ではなく、お互いが意見を言える場を設ける」(同)など、教員側の姿勢に対する注文が多く見受けられた。

 半谷研究員は「子どもであっても理由を知りたいし、自分たちの意見も聞いてほしいのは大人と同じだ。新型コロナという特別な事態であればあるほど、保護者や学校の教師たちは子どもたちの訴えに耳を傾けてもらいたい」と話している。現在、同センターは、子どもの抑うつ状態を中心に4回目の意識調査に取り組んでいる。 (了)

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