治療・予防

コロナ禍で心配される子どもの体力低下
生活や遊びの中で体を動かす工夫を(順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科 内藤久士教授)

 新型コロナウイルス感染症による休校や外出自粛の影響で、子どもたちが体を動かす機会が極端に減り、体力の低下が心配されている。学校はほぼ再開されているが、感染予防に気を付けながらの運動には制約が多い。順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科(千葉県印西市)の内藤久士教授は「3密を避けながら、生活や遊びの中で体を動かすことはできます。家庭でも、できるだけ体を動かす機会を設けてください」と呼び掛ける。

家事で体は動かせる。コロナ禍での体力づくりは工夫次第

家事で体は動かせる。コロナ禍での体力づくりは工夫次第

 ▽体動かす大切さを知る

 スポーツ庁の調査によると、子どもたちの体力は1985年辺りをピークに低下しているという。例えば、小学6年生のソフトボール投げでは2割以上距離が短くなっている。また、遊びや生活の中で体を動かす機会が減り、体育の授業や通学時間以外での1週間の総運動量が1時間に満たない子が全体の1割程度いる。

 臨時休校になり、通学という体を動かす最低限の時間すらなくなってしまったことで、さらなる体力の低下が危惧される。内藤教授は「体力とは、生きていく上の基本的な生命力。それが落ちてしまうと、心身の不調につながります。実際にいらいらしている子どもが多い印象です」と指摘する。しかし、「学校が再開され、体を動かすことでストレスを発散できると分かれば、これまで積極的に体を動かしていなかった子たちも、その大切さに気付くのではないでしょうか」と期待する。

 ▽家庭でも機会つくって

 学校現場は、休校期間中の学習の遅れを取り戻すことを優先せざるを得ず、体力づくりのために力を注ぐのが難しい。3密を避けながら子どもたちのエネルギーを発散させるには、各家庭での取り組みも重要だ。

 「体を動かす方法は運動だけに限りません。家事などで結果的に体を動かしていれば大丈夫です」と内藤教授。例えば、父母が在宅勤務のときは、早朝や夕方の涼しい時間帯に親子で散歩するだけでもよい。風呂掃除や買い物の荷物運びなど家の手伝いも、体を動かすことにつながる。

 子ども同士の遊びは、鬼ごっこが無理でも、影踏みならば互いに接触せずに遊べる。スマホの普及で、オンラインでつながって体を動かせるようになった。音楽をかけて一緒にダンスをすれば、時間と空間を共有でき、コミュニケーションも取れる。縄跳びも一人で黙々とするより、オンラインで一緒にやれば楽しくできる。

 内藤教授は「子ども時代によく体を動かし、体力があった世代は、高齢になっても運動の実施率が高く、元気です。子どもの頃から体を動かす習慣を付ければ、長期的な健康維持にも良い影響があるでしょう」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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