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2020年12月からの新型コロナの感染拡大はヤマ場を越えたとされ、21年1月に再発令された緊急事態宣言も、2週間再延長された首都圏1都3県を除いて解除された。しかし、解除後の患者の減少率は下げ止まり傾向が続き、特に首都圏では、週単位での患者数が横ばいにとどまらず、再度の増加を示すこともある。首都圏に出されている再延長期限である3月21日も近づいてきた。
◇感染状況把握に一定の時間
松本哲哉・国際医療福祉大学教授
感染症に詳しい国際医療福祉大学の松本哲哉教授(感染制御)は、「現在の感染対策ではよくて横ばい、解除すれば再び増加に転じる可能性が高い。期間中により効果的な感染対策を始め、効果が確認されるまで最低でも3月末まで、対策の効果を見極めるためにも、感染症対策の立場からはできれば4週間程度の再々延期が望ましい」と話す。
期間の延期が必要な理由には、感染状況の把握に一定の時間が必要なこともある。現在の制度では、実際の感染から発症、検査による感染確認の報告・計上までは1~2週間の時差があるとされる。このため、再延長後に報告された感染者数などは、首都圏以外で緊急事態宣言が解除された前後までの状態を反映させられず、再延長後の効果を判定するためだけでも、2週間の延長期間は足りないことになるからだ。
さらに、3月後半から4月は学校の卒業や入学、就職や企業の人事異動に伴う歓送迎会、花見など人出が増える要素が増えてくる。このような時期に緊急事態宣言が解除されれば、「人出は急増し、比例して患者も増える」と松本教授は予想する。
その上で、「解除直後は横ばい程度だろうが、少しずつ患者数は増え、あるとき急に増加してピークを迎える。その時期と規模は予想困難だが、本来の流行時期である今年の冬の前に、これまでの反動による流行の第4波が来る確率は高い」と指摘する。
緊急事態宣言が延長されても、繁華街の人出は減らない(3月12日、東京)
◇接触、人出減らすしか
では、どんな対策が可能か。ワクチン接種の予定が遅れる一方で、マスクの装用や手指衛生の徹底などが一定以上に普及している。加える対策としては、人と人の接触を減らす、人出を減らすことしかないのが実情だ。
「休業への補償やテレワーク導入企業への補助が前提になるが、昨年の緊急事態宣言のように飲食業以外への営業自粛の拡大やテレワークの徹底が考えられる。これができれば、今からでも効果は期待できるが、実施するかは政治判断になる…」と松本教授は厳しい口調で指摘する。
このように感染の抑制を求める背景には、医療現場の疲弊がある。確かに昨年末からの流行ピーク時に比べて患者数、病床利用率は改善したように見える。しかし、もともと重症患者の診療に携わる専門の医師や看護師は多くはなく、病床だけを増やしても、医療スタッフの負担は逆に増えてしまう。
◇新たな感染症で同じことを繰り返す懸念
松本教授も「自分の所属する病院でも入院患者はピーク時の半分にまで減ったが、本来の想定患者数からみれば、4~5倍の患者数。せめて、1カ月間程度、ピーク時の4分の1にまで減った状態を維持できれば、スタッフの再配置や態勢の見直しを実施する余裕が出てくる」と話す。
これまでの日本の医療は収益面が有利な診療に軸足を置いていて、あまり利益を生み出さない感染症の診療や感染対策は重視されてこなかった。このため感染症に対応できる医療スタッフも病床数も少なく、今回のような感染の急拡大に対応するには無理が出てくる。松本教授は「国として感染症への対応を見直していかないと、今後新たな感染症が問題になっても、また同じようなことを繰り返していくのではないか」と訴えている。(了)
(2021/03/16 14:00)
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