話題

気付かないまま進む慢性腎臓病
~悪化すれば人工透析や腎移植~

 「慢性腎臓病」(CKD=chronic kidney disease)は、腎臓の機能が少しずつ低下し、悪化すると人工透析や腎移植が必要となる怖い病気だ。しかし、かなり進行するまで自覚症状がなく、なかなか関心が持たれない病気でもある。医療関係者や製薬会社は、毎年3月の「世界腎臓デー」に合わせてイベントを行うなど、認知度を高める取り組みを行っている。

東京・丸の内で開催された啓発イベント(2025年3月)

 ◇出にくい自覚症状

 日本腎臓学会は、CKDを「腎障害や腎機能の低下が持続する疾患」と定義。軽症者も含めた国内の患者人口を約2000万人と推定している。成人の5人に1人がかかると言われている。診断基準は、血液中の「eGFR」(estimated glomerular filtration rate)という腎臓の働きを示す数値が60%未満に低下するか、尿中にタンパク質が出るなどの異常が続く状態だ。

 CKDの自覚症状は、むくみ貧血息切れなどがあるが、これらは症状が進んでからしか出てこない。このため、放置する患者が多く、進行して腎機能がさらに低下し、人工透析や腎臓の移植が必要になってしまう事例もあるという。

 ◇認知度、どう高めるか

 CKDが進むと腎機能を回復させるのは困難になるため、予防や早期発見・治療が大事になる。初期治療は、血糖や血圧を下げることが中心となり、運動の励行や減塩などの食生活の見直しといった生活習慣の改善が求められる。病状がより進行してから専門医による治療が始まるのが一般的だ。血清クレアチニンから算出するeGFRの低下や尿中にタンパク質が出た段階で患者からかかりつけ医に相談し、腎臓病の専門医を紹介してもらう。

 そこで重要なのが、CKDの特性を一般の人に知ってもらう啓発活動。今年も世界腎臓デーに合わせて東京・丸の内で開かれた啓発イベントでは、病態や減塩などの予防法を紹介するミニ講座や、指から採血して血清クレアチニンを測定する(簡易)腎機能検査などが実施された。

東京慈恵会医科大学の福井亮医師(左)

 ◇問題は健診後の対応

 イベントに立ち会った東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科の福井亮医師は「検査結果で驚くような数値は出なかった。参加者の多くが比較的若い勤労世代であったのも理由だろう。普段健診を受けている参加者が多い印象であったが、問題は健診結果に異常があって受診を勧められても、受診していただけない患者が一定数いることだ」と指摘する。このため、健診を実施する保険者や事業者、一般の開業医や病院内の他科の医師・医療スタッフに対しても、「CKDについての知識や腎臓専門医への紹介の重要性について情報を積極的に発信していく必要がある」と訴えている。(喜多壮太郎)

【関連記事】

新着トピックス