こちら診察室 膝の痛みと治療法の新たな選択肢
膝の「ポキポキ」「パキパキ」音が気になる人へ
~考えられる疾患とは?~ 【第3回】
膝からポキポキ、パキパキとはじけるような音や、ギシギシ、ミシミシときしむような音が鳴ることはありませんか? 「これって病気のサイン?」と不安に感じる方も多いでしょう。
音の種類ごとに考えられる原因や疾患、適切な治療法について、膝の専門医が詳しく解説します。

関節が引っ張られることで内部の圧力が下がってできた気泡がはじけて音が鳴る(ひざ関節症クリニック作成)
◇膝が「ポキポキ」「パキパキ」と鳴る
手の指を鳴らしたときのような乾いた音が膝からも聞こえることがあります。
これには次のような原因があります。
・疾患ではない「膝の音」
「ポキポキ」や「パキパキ」という音は、関節液にたまった気泡がはじける音です。関節は関節液で満たされ、軟骨を保護していますが、急に動くと気泡ができ、その気泡が圧力ではじけることにより音が鳴ります。指の関節がポキポキ鳴るのと同じ原理です。
しかし、思わぬ疾患の前兆かもしれないのが膝の音。ある調査では膝のポキポキ音と変形性膝関節症という疾患の発症率との関連を調べた結果、対象となった3495人のうち、ポキポキ音が全くない人に対し、まれにある人でも1.5倍、いつもある人では3.0倍も変形性膝関節症という疾患の発症リスクが高かったというのです[1]。
・膝の内側に痛みを伴う「棚障害」
膝関節には「関節包」という袋状の組織があり、その内側に「滑膜ひだ」があります。膝の内側のものを「棚」と呼び、屈伸(くっしん)時に挟まることでパキパキ音や痛み、引っ掛かりを感じることがあります。棚自体は問題ありませんが、膝の使い過ぎで膝のお皿(膝蓋<しつがい>骨)と太ももの骨(大腿<だいたい>骨)の間に挟まりやすくなり、炎症や痛みを引き起こすことがあります。

棚障害の仕組み(ひざ関節症クリニック作成)
・棚障害の治療法
オーバーユースが原因であることが多いため、運動量を抑えて安静にします。さらに、抗炎症作用のある薬剤を投与し、炎症や痛みを抑える保存療法が一般的。そうした保存療法で効果が見られず、日常生活に支障が出るほど症状が悪化してしまった場合、手術により棚を摘出することもあります。
◇「ミシミシ」「ゴリゴリ」「ギシギシ」と鳴る
膝から何かがこすれたり、ぶつかったりするような音がした場合、注意が必要です。この音が放置されると、深刻な問題につながることもあります。思い当たることがないか、しっかりと確認してみましょう。
・膝にこわばりや痛みが生じる「変形性膝関節症」
膝から「ミシミシ」や「ゴリゴリ」といった音がする場合、特に注意が必要です。この音の原因の一つとして、変形性膝関節症が考えられます。膝関節では、太ももの骨とすねの骨が接しています。その間にある軟骨が衝撃を吸収し、動きを滑らかにしていますが、この軟骨がすり減ると骨同士がぶつかり、音が鳴ることがあります。

変形性膝関節症は、軟骨がすり減る進行性の疾患(ひざ関節症クリニック作成)
変形性膝関節症は、この軟骨がすり減る進行性の疾患です。
進行すると、膝の音だけでなく以下のような症状が表れます。
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(2025/05/15 05:00)