治療・予防 2024/12/23 05:00
薬物療法が大きく進歩
~ぼうこうなどの尿路上皮がん(虎の門病院 三浦裕司部長)~
今まで当たり前にできていた動作が、ある日突然できなくなる「イップス」。スポーツの世界ではよく使われる言葉で、これが原因で引退に追い込まれる選手も少なくない。自らも野球選手時代にイップスの経験を持つイップス研究所(横浜市)の河野昭典所長は「イップスに陥った時に練習するのは逆効果です。イップスを受け入れて正しい対処を行うことが抜け出す近道です」と話す。
練習は逆効果。不安を取り除くことが大切
▽無意識の不安から
野球の試合中に突然ストライクが入らなくなった、ゴルフのショートパットで手が震える、楽器の演奏中に指が動かなくなったなど、イップスはさまざまな形で表れる。河野所長によると、イップスは脳の仕組み、特に小脳が影響しているという。「小脳は大脳と連携し、体の動きをコントロールする機能を持っています。例えば、3メートルの距離にボールを投げる場合、小脳は大脳が認識した距離に対する動作の強弱、指先の感覚といった細かな情報をプラスして大脳に信号を送り返します。イップスはこの情報のやりとりが正しく行われていない状態です」と説明する。
人間の行動の9割は無意識に行われているといわれ、意識的に練習した技術は自然と無意識の領域に蓄積され、考えなくてもできるようになる。ところが、失敗してはいけない、うまく見せたいと意識すると、脳の中に「失敗する自分」が無意識に描かれてしまい、その結果、小脳から正しい動作の信号が送られず、失敗につながってしまうという。河野所長は「イップスは、この無意識の部分をケアしなければなりません。それには練習を休み、不安の感情を取り除くことが必要です」と強調する。
▽三つの手順で克服へ
同研究所では、三つの手順でアプローチしている。まず、120問から成る心理分析テストを行い、その人が持つ性格の特性を客観的に判断する。その上で、物の見方や受け取り方など、観念を変えるカウンセリングを行う。イップスを発症する人は能力が高く、こうならないといけないという思い込みが強い。「こうなれればいいなという、自分の行きたい方向を思い描くことが大事です」と河野所長。さらに、医療催眠を用いて無意識の領域にアプローチし、心を楽にするトレーニングを行う。
「イップスは技術や根性論では改善しません。指導者はイップスを理解し、相手の気持ちに耳を傾けるようにしてください」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/04/11 05:00)
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