治療・予防

成長期の投球障害肩
予防やケアのポイントは

 ボールを投げる動作を繰り返した結果、肩に痛みが生じるスポーツ障害肩。野球の投手に多く、投球障害肩とも呼ばれているが、「投球動作は全身を使った運動で、痛みの原因は必ずしも肩だけにあるとは限りません」と、横浜南共済病院(横浜市)スポーツ整形外科の山崎哲也部長は話す。痛みが起きる前にチェックすべきポイントを聞いた。

投球障害肩は痛みが起こる前に早期発見を

投球障害肩は痛みが起こる前に早期発見を

 ▽過度な負荷が損傷に

 野球の投球動作では、下半身から得たエネルギーが、一連の動作の中で体幹、肩甲帯、肘、手、ボールへと伝えられる。一連の動作のどこかに問題があるまま投球動作を繰り返すと、肩に過度な負荷がかかって組織が損傷し、痛みが起きる。

 特に子どもの場合は要注意。「成長期の骨には骨端線、骨端核があり、投球障害肩が起こりやすい」と山崎部長。骨端線とは骨に変化する成長軟骨で、骨端核はその中心部にある芯だ。骨になる前の骨端線は、投球動作の繰り返しによる過度な負荷で損傷を受けやすい。「成長期の子どもは、小型の大人ではありません。成長期に無理をさせないことが重要なポイントです」と話す。

 ▽肩甲骨の左右差に注目

 投球障害肩には、痛みが出る前に幾つかのサインがみられる。見た目で分かりやすいのが肩甲骨の位置が左右で異なることで、両手を上げると顕著に表れる場合もある。

 また、肩の動きに硬さや乱れが出てくるのも、障害が生じる前の重要なサインだ。「ダメージが蓄積すると、次第に組織の柔軟性が低下して肩の後方が硬くなり、可動域が制限されます」と山崎部長。この他、股関節の可動域に左右差が見られる場合も、下半身をうまく使えていないので肩に負担がかかりやすくなる。特に野球では、回転を伴う動きを繰り返すため、大きな負担がかかりやすい。こうしたサインが見られた場合、身体のどこかに異常があり、痛みが起こる一歩手前の状態にあると考え、早期にスポーツ整形外科を受診することが望ましいという。

 早期発見のキーマンは指導者で、「予防やケアの知識を身に付け、野球を通して健全な身体をつくることを意識してほしい」と言う。保護者に対しては、「上半身裸の状態でしっかり観察し、姿勢が悪くなっていないか、肩が片方下がっていないか、変化を見逃さないようにしてください」と、山崎部長はアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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