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抗うつ薬による薬物治療で効果が得られない難治性のうつ病は患者の約3割を占めると言われる。近年、新たな治療法として注目されるのが、脳に磁気刺激を与える「反復経頭蓋磁気刺激(はんぷくけいずがいじきしげき)rTMS」療法だ。豊富な治療実績を持つ昭和大発達障害医療研究所(東京都世田谷区)の中村元昭副所長に聞いた。
rTMS療法のイメージ
▽磁気で脳を活性化
うつ病患者では、脳の表面を覆う大脳皮質の特定部位の活動が低下することが知られている。rTMS療法は、この領域に磁気刺激を加え、脳内に誘導される電流でうつ病と関連する神経ネットワークを活性化させる治療法だ。
治療の対象は、1剤以上の抗うつ薬でも十分な治療効果が得られない薬物治療に抵抗を示す18歳以上のうつ病患者。2019年6月に保険適用となり、1回の治療費は3600円(3割負担の場合)。治療時間は約40分で、原則週5日、最大30回続けて受けられる。
神奈川県立精神医療センター(横浜市)でうつ病に対するrTMS療法の臨床研究を10年以上行った中村副所長は「保険診療が適用されたrTMS療法では、治療開始から3週時点で寛解(病前に近い状態まで改善)した患者が1割、効果が得られなかった患者が3割でした。残りの6割は一定の治療効果が見られたため、さらに3週間治療を継続しました」と話す。
▽刺激部痛も徐々に消失
rTMS療法は治療効果が期待できるだけでなく、侵襲性が低いことから安全性の高い治療法として評価されている。主な副作用は刺激部の痛みだが、治療回数を重ねるごとに軽減され、やがて痛みの訴えはなくなるという。
一方、約3割の患者では治療効果が得られなかったが、中村副所長は「rTMS療法はうつ病治療の最終手段ではありません」とした上で、「効果が得られない場合は、別の抗うつ薬への切り替え、頭皮に貼り付けた電極で通電して治療する電気けいれん療法、さらには環境調整や精神療法(心理療法)などを組み合わせるなど選択肢はたくさんあります」と説明する。
現在、双極性障害などに対するrTMS療法の臨床研究が国内外で行われている。目下、保険診療で治療が可能な病気はうつ病のみだが、今後は他の精神疾患にも適応が広がる可能性もある。脳神経に磁気などで刺激を与えるニューロモデュレーション療法の可能性に期待したい。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/07/22 05:00)
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