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高齢者が要介護になる原因の一つ、転倒を予防するには運動や栄養摂取、生活環境の見直しなどが必要だ。手首と指先に小さな装置を付け、指先を振動刺激することで転倒を予防するシステムを県立広島大(広島市)保健福祉学部の島谷康司教授らと開発した、横浜国立大大学院(横浜市)工学研究院の島圭介准教授に聞いた。
▽ライトタッチ現象を応用
高齢者の転倒は骨折によって寝たきりなどの要介護のきっかけになることも多い。立った姿勢で片足の先を床から離すと、次第にふらつくようになる。目を閉じた状態では簡単にふらついてしまうが、手の指先が何かに触れているとふらつきにくくなる現象が見られる。
島准教授によると、人が何かに軽く触れていると安定して立てたり、転倒しにくくなったりする「ライトタッチ現象」と呼ばれる。触れている物は壁、手すりなどの固定物、カーテンや着ている服でもよい。正確なメカニズムは分かっていないが、脳が自分の位置や姿勢を把握しやすくなり、バランス能力が高まるからとの見方もある。
島准教授らは、ライトタッチ現象を利用してバランス能力を向上させ、転倒しにくくすることができるのではと考え、研究を始めた。何かに触れたときに感じる反力(触れた物から押し返す力)を微弱な振動で表現し、それを指先に与え、ライトタッチ現象を再現できることを発見。指先に振動刺激を与える小型のウエアラブルデバイス(体に装着するコンピューター端末)を開発した。
▽指標の「立位年齢」
20~60代の健康な150人で効果を検討したところ、この装置を使うと、立位時の姿勢の不安定性が全ての年齢層で低減した。島准教授は「姿勢の不安定性は転倒しやすさと密接に関係することから、装着により確実に転倒しにくくなると考えられます」と話す。
装置の使用中とそうでない時の姿勢の不安定性を1分間で調べ、その人の転倒しやすさを「立位年齢」という指標で表せることも分かった。姿勢の安定に関するどのような機能が低下しているかも分かるため、より効果的な転倒予防訓練の提案も可能になるという。介護業界などからも効果を期待されている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/01/26 05:00)
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