高齢者の夜間頻尿
転倒や骨折の危険も(東邦大学医療センター大橋病院泌尿器科 関戸哲利診療部長)
高齢になると、夜中に何回もトイレに起き、そのたびに足元がふらついて転倒の危険が高まる。東邦大学医療センター大橋病院(東京都目黒区)泌尿器科の関戸哲利診療部長は「転倒して骨折すると要介護状態になりやすいので、夜間頻尿を改善することは重要です」と話す。
転倒して骨折すると要介護にも。夜間頻尿の改善を
▽高齢者に多い夜間多尿
厚生労働省の2016年国民生活基礎調査によると、介護が必要になった主な原因として「骨折・転倒」が指摘されている。夜間頻尿は転倒のリスクとなる。
夜間頻尿の原因である夜間多尿とは、1日の尿量の3分の1以上が夜間に排せつされる場合を指す。通常なら睡眠中は脱水にならないよう尿の生成が抑えられるが、高齢になると尿量の調節に関わるホルモン分泌の乱れや腎臓機能の低下などの要因で、夜間に尿が作られやすくなる。高血圧、心機能低下、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群なども夜間多尿に関係する。また、塩分の取り過ぎも夜間多尿を招きやすいという。
ほかに原因として考えられるのは、過活動ぼうこうや前立腺肥大症など泌尿器系の疾患によるぼうこうの容積の減少であり、睡眠障害(寝付きが悪い、途中で起きる)も関与する場合がある。
関戸診療部長は「夜間頻尿の原因は多様で、他の疾患と密接に関連している可能性もあります。気になる場合は、まずかかりつけ医に相談しましょう」と勧める。
▽環境整備で転倒予防
治療は原因によって異なるが、夜間の尿量が増加する夜間多尿に対しては行動療法が有効だという。「塩分の取り過ぎが夜間多尿を招いているなら減塩を心掛けるなど、生活習慣を改善する必要があります」と関戸診療部長。
行動療法に効果がない場合は、腎臓に作用して尿量を減らすよう働くデスモプレシンという薬剤が使われることもある。高血圧、心機能低下、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群などによる夜間多尿なら、その治療を優先する。また、1日の水分摂取量、排尿量、排尿の時刻などを記録する「排尿日誌」は診断や治療効果の把握に有用だという。
夜中に起きてトイレに行くまでにはいろいろな動作が必要で、十分に目が覚めていないと転倒しやすい。転倒予防の工夫について、関戸診療部長は「場合によっては、し瓶やポータブルトイレを利用するなど、排尿するまでの動作がより少ない環境にすることで安全性を確保することも一手です」と助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/08/10 05:00)
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