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新型コロナウイルス感染症の流行で導入が増えた在宅勤務制度は企業に定着しつつあるとみられている。そうした働き方の変化が心身の状態に与える影響について、労働者の追跡調査を行った東京医科大学病院(東京都新宿区)メンタルヘルス科の志村哲祥兼任講師に聞いた。
人間関係のストレスが高かった人ほどメリットがある
▽メンタルでメリット
新型コロナ流行で一気に拡大した在宅勤務について、志村講師らの研究グループはコロナ前の2019年には在宅勤務を行っていなかったが、その後導入した約3000人を対象に追跡調査。心身のストレスを軽減し得ることを明らかにした。
「メンタルヘルスの視点で最も大きなメリットは、在宅勤務によって睡眠時間が延びたことです。睡眠時間が6時間未満の就労者はそうでない人に比べ、自殺リスクが5.1倍に上ります。睡眠時間を確保できるかが心身の健康に大きく影響します」と志村講師。今回の研究に付随した調査では、特に遠距離通勤者ほど在宅勤務で睡眠時間が延びたことも明らかにした。
「働く人が特にストレスを感じる要素は、職場の人間関係。業務それ自体の負荷以上に、心身の負担となります。在宅勤務は、これまで社内の人間関係ストレスが高かった人ほどメリットがあると言えます」
▽在宅のみでは生産性低下
一方で、在宅勤務のみが続いた場合は、心身の不調によって仕事の生産性が低下する可能性が示された。「連日の在宅勤務は、生活が夜型になって生活リズムが乱れやすく、家を出る機会が減ることで生産性が落ちると考えられます。生産性を向上させた上で心身のストレスを軽減する働き方を考えることが大切です」と志村講師は話す。
緊急事態宣言の解除に伴い通常の勤務態勢に戻った企業も少なくないが、今回の調査から、在宅勤務の継続が心身のストレス軽減になることが示された。また、がんなどの病気を患った人は、在宅勤務によって「仕事が継続できた例もあった」という。
コロナ流行以降、在宅勤務の環境整備も急速に進み、これを機に「生産性を高めると同時に心身の健康を守る働き方」へのシフトが進むことが期待される。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/02/13 05:00)
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