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テレワークで生じる健康問題
~メリット多いがデメリットも~ 医学博士 福田千晶

 2020年に新型コロナウイルスの感染が拡大し、最初の緊急事態宣言の頃に、在宅でも仕事ができる職場の多くでテレワークが導入され、今後も働き方の一つとして定着しそうです。しかし、十分な準備期間もなく始まってしまったので、メリットがいっぱいある半面、問題点もいろいろあるわけです。

通勤は良い運動の機会

 ◇テレワークの利点

 テレワークという働き方は以前からありましたが、実践できるのは、ごくわずかの人だけでした。コロナ感染拡大により、多くの職場でテレワークが勧められるようになりました。

 まず、テレワークのメリットとして感染予防があります。個人としても通勤や職場で人と会うことがなくなれば、新型コロナウイルスに関しても感染の機会はかなり減るわけです。さらに、社会全体としても人の流れが減少すれば、感染拡大の予防や対策になります。つまりダブルのメリットがあります。

 職場で他人に会わないことは、人によって、時によっては気楽で好まれます。コロナ禍では、家ならマスクなしで過ごせることもストレスが少なくなります。

 テレワークでは通勤時間が不要ですから、時間的なゆとりが生まれるはずです。その時間で運動したり、家族と過ごす時間にしたり、家事をしたり、趣味や勉強を行う時間に当てたりすることもできます。上手に過ごせば、時間的にも気持ちの上でも、ゆとりある日々を過ごせるはずです。

 外食が減るため、人によっては家で健康的な食事ができます。「仕事帰りの一杯」がないから、飲酒の機会が減った人もいます。職場では喫煙所がリフレッシュできる憩いの場所だった人は、家では吸わなくなった人もいるようです。

 仕事中でも家に居られる安心感もあります。家を空けていると、空き巣や火事の心配があります。家族構成によっては家にいる高齢の親や子どものことなど、心配になっても職場で仕事中なら、様子を帰宅して見ることはできません。テレワークなら、別室にいても様子が伝わるので心配は減るでしょう。

 職場でも、テレワークの人がいることで職場のスペースがゆったり使えたり、ソーシャルディスタンスを保ちやすくなったりします。テレワークによる経費節減のメリットのほかにも、健康的な環境整備にもつながるでしょう。

 ◇運動不足やストレスにも

 私は人間ドックや健康診断の受診者の皆さまの話を聞く機会が多く、産業医として面談の場で話を聞くこともあります。テレワークの問題点をしばしば聞いていますが、「あぁ、なるほど」と思うようなこともあります。

・「通勤がないから歩かない」という意見は、すでに数え切れないくらい多くの人から聞きました。さらに、その影響と思われる人間ドックや健康診断の結果の悪化も、数え切れないくらい見てきました。「通勤は良い運動の機会」とつくづく思います。

・「上司から連絡が来た時にパソコンの前にいないとサボっていると思われるから、トイレも行きにくい」という意見も複数の人から聞いています。朝から夜まで座りっぱなしのため、肩凝りや腰痛、脚のダルさ、目の疲れが自覚症状となっているようです。

・「周囲に人がいないと、ちょっとしたことを教えてもらえないので余計な手間がかかり、ストレスになる」「管理職の立場では部下の管理が難しい、悩みやストレスが増えた」といった、ストレスが増えたという意見は想定内ですが、コミュニケーション手段の工夫で改善したいことです。

・「家で仕事をしていると疲れる」という人も多いようです。一日の過ごし方にメリハリがなく、朝も「仕事モード」にならないのに、やることは山積み。夜は仕事が終わっているのに、仕事関係のことが気になり、リラックスしにくいとか。通勤という仕事のウオーミングアップやクーリングダウンがないのも、仕事の心身への負担を増やしている様子です。

・「家が仕事の環境に適していないから疲れる」という悩みも多いです。「机やいすが仕事に合わない」「家族がうるさくて仕事に集中できない」「リモート会議では子どもの泣き声が雑音になって肩身が狭く、精神的に疲れる」「室内の空調が不良で冬は寒くて冷える」など、いろいろな意見を聞いています。徐々に家具を買い替えて、快適な部屋にしたという話もあります。

休憩時間に家事をすると休みにならない

・何人かの女性からは「夫婦2人ともテレワークなので、昼になると『昼メシ、まだ!?』と言われ、頭にくる。これが大きなストレス」という発言もありました。同様に、「昼休みに家事をしてしまうので、休みにならない」という意見も、聞いてみて気付いたことです。

・「職場では昼食は近所の店で定食を食べていたけど、家の周囲は何もないから、買い置きしてあるカップ麺ばかり。栄養バランスは人生で最悪」という話も最初は驚きましたが、何人も同じ話をするので、「これが現実なのかも」と思うようになります。

・「出勤すると、帰りに駅から家の間にあるスーパーで食材を買って来るけど、テレワークでは外出しないから、生鮮食品を買う機会が減って栄養バランスは悪化した」。この意見も納得です。夜になって仕事が終わって、それから食品の買い出しに出かけるかというと、面倒になるのは分かります。

・「テレワークだと、誰も注意やストップをかけてくれないので、どうしても仕事時間が長くなり、疲れがたまる」という意見もかなり多く、テレワークで肉体的にも大変になるという意見は意外でした。

 ◇求められる教育と意識改革

 このように、聞いてみて初めて気付く悩みごとや、健康に関係するテレワークのデメリットがいっぱいありました。

 ほかにも、「朝寝坊できるから夜ふかしになった」「家飲みで飲酒量が増えた」「いつでも吸えるから喫煙本数が増えた」「仲間との雑談がストレス発散になっていたが、それができずストレスがたまる」など、人それぞれにテレワークのデメリットがあるようです。

 テレワークは、やはり職場ではない環境で仕事を行うために心身への負担が増えることがあります。また、運動量の低下と生活習慣病の発症や悪化も気になります。「生活習慣」がいかに健康と関わりが大きいか、コロナ禍で実感する毎日です。その一方で、テレワークで通勤時間が浮いた分で、効果的な運動を取り入れたり、家で健康に配慮した食事をしたりして生活改善ができた人もいるのです。

 今後も働き方の一つとして、テレワークは残っていくでしょう。今後、テレワークに向けての職場での教育、個人の意識の改革など、行うべきことがありそうです。そして、テレワークという選択肢が増えて、より健康的に働ける社会になることを願っています。(了)

福田千晶氏


 ▼福田千晶(ふくだ・ちあき)

 慶應義塾大学医学部卒業、医師として東京慈恵会医科大学病院リハビリテーション科勤務を経て、クリニックでの診療と産業医業務を行う。勤務医時代に、エッセーや論文のコンテストでの受賞などをきっかけに執筆活動も開始し、健康に関するテーマで著書や監修書は多数。

 日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、日本人間ドック学会人間ドック健診専門医、日本リハビリテーション医学会専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本体力医学会健康科学アドバイザー。

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