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新型コロナウイルスの感染拡大に伴う2020年の1回目の緊急事態宣言で、ウイルス陽性患者の受け入れ病院が過酷な勤務状況に置かれたことなどから、認知症の高齢者の身体拘束が増えていたことが京都大学大学院医学研究科(京都市)医療経済学分野の奥野琢也医師らの分析で分かった。
▽従来のケアが困難
身体拘束とは、例えば病院や介護施設に入院・入所する認知症高齢者の独り歩きや転倒などを防ぐために、体をひもやベルトでベッドや椅子に縛るなどして行動を制限する行為だ。
日本認知症学会は20年5月に、認知症専門医を対象にアンケート調査を実施。コロナ流行後に認知症患者の認知機能悪化があったとの回答は47%を占め、独り歩き、妄想、うつなどの行動・心理症状の悪化を認めたとの回答も46%に上った。
症状の重い認知症患者が増えれば、より念入りなケアを必要とする場面も増える。しかし、コロナ陽性患者の受け入れ病院は、感染対策の面会制限や医療従事者の人手不足、身体的・精神的負担増などで厳しい状況に置かれていたとみられる。
▽厳しい医療現場
医療や介護の現場での身体拘束は原則禁止だが、本人や周囲の人に危険が生じる可能性が高く、他に方法がない場合に限り一時的に認められる。しかし、「コロナ下での厳しい医療現場では、身体拘束を行わざるを得ない状況が増えると予想しました」と奥野医師。
厚労省のデータを用い、認知症高齢者の身体拘束実施率を19年1月から20年7月まで調べたところ、認知症ケアを受けている高齢者1000人当たり、陽性患者受け入れ病院では20年4月の1回目の緊急事態宣言の前後で平均466.5人から同486.8人に増加。一方で患者を受け入れていない病院は同412.7人から同409.6人とほぼ横ばいだった。
現役医師としてコロナ陽性患者の診療経験を持つ奥野医師は「受け入れ病院の医療スタッフは仕事量の増加、高い感染リスク、誹謗(ひぼう)中傷など、身体的・精神的負担が大きく、それが身体拘束の増加につながったと考えます」と指摘。「感染対策と並行して、医療関係者の身体的・精神的ケアも考慮する必要があります」と訴える。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/04/23 05:00)
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