治療・予防

長引く全身の不調―甲状腺機能異常
~症状思い当たれば検査を(金地病院 山田恵美子院長)~

 甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンは、通常一定量に保たれている。甲状腺の働きに異常が生じてバランスが崩れると、全身にさまざまな症状を来す。金地病院(東京都北区)の山田恵美子院長は「長引く体の不調は、甲状腺の病気が原因かもしれません」と話す。

甲状腺機能異常の主な症状

 ▽全身に影響

 甲状腺は首の前側の付け根に位置する、チョウが羽を広げたような形の臓器。大きさは縦約4センチ、横約1~2センチ、厚さ約1センチ、重さ15~20グラム程度だ。脳から甲状腺刺激ホルモンが分泌されると、食物から摂取したヨウ素を使って甲状腺がホルモンを作る。山田院長は「消化管や皮膚など、全身の細胞の新陳代謝を活発にして、元気をつくるホルモンです」と説明する。

 甲状腺機能異常には、甲状腺ホルモンが多くなる甲状腺機能亢進(こうしん)症と、少なくなる甲状腺機能低下症がある。甲状腺機能亢進症は頻脈や体重減少、手指の震え、発汗増加などを引き起こす。甲状腺機能低下症は、疲れやすい、緩慢な動作、眠気、記憶力の低下、便秘などの症状に加え、不妊や流産などが起こりやすくなる。

 「甲状腺機能異常は女性に多く、症状は他の病気でも起こり得るものです。このため、年齢によっては更年期障害や加齢によると診断されてしまうケースが少なくありません」と山田院長。

 ▽治療は服薬が中心

 主な原因は、自身を攻撃する自己抗体ができることだ。例えば、甲状腺機能亢進症の多くを占めるバセドー病では、抗TSH受容体抗体や甲状腺刺激抗体という自己抗体ができて甲状腺を刺激し、甲状腺ホルモンが過剰に作られる。

 甲状腺機能低下症で多い橋本病では、抗TG抗体や抗TPO抗体という自己抗体が甲状腺を破壊し、甲状腺ホルモンの分泌を低下させてしまう。「なぜ自己抗体ができてしまうのかは分かっていません」

 診断は、採血により甲状腺ホルモンの分泌量や抗体の有無を調べる検査や、超音波検査で行う。治療の中心は服薬だ。甲状腺機能亢進症の場合は、甲状腺ホルモンの分泌を抑える薬を服用する。白血球減少症などの副作用がまれにあるので、定期的な検査が必要になる。甲状腺機能低下症の場合は、甲状腺ホルモン補充療法を生涯継続する。

 山田院長は「他にも腫瘍やしこりなど、さまざまな原因で甲状腺機能異常を来すことがあります。思い当たる症状があったら専門医を受診し、検査を受けてください」と呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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