2024/12/04 05:00
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前回の記事で、飲み薬と点滴の違いについて書きました。
・飲み薬より点滴の方が効果が高いとは限らない
・重い病気の方が点滴の回数が多いとは限らない
というのが、前回ご紹介した知識ですね。
では、「同じ成分で、内服と点滴のどちらの製剤もある」という場合、何を根拠に選択しているのでしょうか?
飲み薬と点滴、それぞれのメリットを知ろう
言い換えれば、飲み薬と点滴の、それぞれのメリット・デメリットとは何なのでしょうか?
これも薬の種類によってさまざまですが、ごく簡単な一般論を述べてみましょう。
◇飲み薬のメリットとは
まず飲み薬の最大のメリットは、何といっても体に針を刺す必要がないことでしょう。
医療従事者の力を借りることなく、「患者さん自身が自分に投与できる」のが飲み薬の強みです。
「仕事の合間に薬を投与する」といったことも、飲み薬なら楽々できますから、日常生活の制限が少なく済みます。
一方、点滴のメリットは、量の調節がしやすいことです。極端な例を挙げると、「AとBとCの三つの薬を毎日10錠ずつ飲んでください」と言われても、なかなか難しいでしょう。水だけで満腹になってしまいそうです。
点滴なら、これが簡単にできます。必要な成分の製剤を血管内に注入すればいいからです。
翻って考えれば、量の調節の制限が大きいことが飲み薬のデメリットと言えます。
◇点滴のメリットとは
点滴のメリットは他にもあります。
「一つの薬を24時間かけてゆっくり微量ずつ投与する」という微妙な調節が可能です。薬の種類によっては、「たった1滴」が大きな効果を持つものもあります。
「1時間に1ミリリットルずつ」というように、ごく微量ずつ体に薬を注入できるのも、「点滴ならでは」の強みです。
また、点滴なら、飲み薬にありがちな「飲み忘れ」の心配がありません。点滴は、投与のタイミングを全てプロに任せる治療法だからです。
例えば、「自宅で厳密に8時間おきに薬を飲む」よりも、「入院中に8時間おきに薬を点滴してもらう」方が簡単で確実です。
投与されている間、患者さんが眠っていても構わないのです。
◇疑問があれば尋ねてみよう
医師は、患者さんの病状や必要な薬の種類に合わせて、点滴の薬にするか飲み薬にするかを選びます。もちろん、これら以外にも、座薬や貼付薬など薬の剤型はさまざまにあります。
「なぜこの方法が選ばれたのだろう?」と疑問に思ったときは、ぜひ担当の医師に尋ねてみてほしいと思います。(了)
山本 健人(やまもと・たけひと) 医師・医学博士。2010年京都大学医学部卒業。外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、内視鏡外科技術認定医、感染症専門医、がん治療認定医など。「外科医けいゆう」のペンネームで医療情報サイト「外科医の視点」を運営し、累計1200万PV超を記録。各地で一般向け講演なども精力的に行っている。著書「すばらしい人体」「すばらしい医学」(ダイヤモンド社)はシリーズ累計23万部。「医者が教える正しい病院のかかり方」(幻冬舎)、「患者の心得」(時事通信)ほか著書多数。
(2024/05/01 05:00)
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