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夜でもエアコン使用を
~体温を超える気温は「災害」~

 7月上旬は35度以上の猛暑日どころか、場所によっては最高気温が体温を上回る日もあった。梅雨が明け、夏本番に入り、どう備えておくべきだろうか。

あまりの暑さに都内には蜃気楼(しんきろう)の一種の逃げ水が出現(7月7日)

 テレビなどで通常伝えられる気温は、周囲の環境の影響を受けにくい場所で測定されている。このため、街中では測定気温を数度上回っている状態も珍しくない。熱中症などを引き起こす「人体に危険な」暑さにどう対処するか、専門医に注意点を聞いた。

 「人間は体の中で燃焼させたエネルギーを血液循環や発汗による熱交換・放散という形で外に放出している。もし周囲が体温以上の温度ならば、熱は体内にこもって上昇して臓器の活動などに障害を起こしてしまう」。熱中症に詳しい済生会横浜市東部病院患者支援センター長の谷口英喜医師は、気温が体温を上回ることの怖さをこう説明する。

エアコンを切って寝ると、就寝中に重度の熱中症になってしまう例が少なくない

 ◇怖い夜の熱中症

 熱中症というと、昼間にかかるものと思いがちだが、今回のような災害級の暑さでは、日が沈んでからも危険は残る。

 「夜は涼しくなる」と思い、エアコンを切って寝る人も少なくない。この結果、体温の上昇と水分不足を引き起こし、起床時には意識がもうろうとしたり、体が動かなくなったりするなど、重度の熱中症になってしまう例が少なくない。

 特に都市部では、コンクリート造りのマンションやアスファルト舗装の道路が、日光に当たって蓄積された熱を日が沈んでから放射する。日没後も気温が下がらない現象が起き、夜間の室温でも30度以上、ひどい場合は体温以上になってしまう。

 「こうなれば人体は体温を放散して下げることができず、睡眠中でも熱中症になってしまう」と、谷口医師はエアコン使用の重要性を強調する。

 ◇「寒い」と言う高齢者には

 中でも注意が必要なのは高齢者だ。加齢に伴い体温調整の機能が低下したり、暑さを感じる機能が鈍くなったりする人がいるからだ。

 「エアコンをつけたまま寝ると『寒い』と言われることもある。十分な説明をして熱中症の怖さを理解して対応してもらうことが大切だ」(谷口医師)。

 冬用寝間着を着て布団を掛けていれば、エアコンの冷気が呼吸により肺に入って体を冷却する。「寒い」と嫌わずに、エアコンを使いながら熱中症を防ぐ工夫をする必要があるという。

 もちろん全ての家にエアコンがあるわけではないし、電気代の負担の問題もあるが、谷口医師は「このような暑さは暑熱順化では対応できず、暑熱回避が必要。エアコンの有無が生死を分けかねない状況が少なくない。『災害級猛暑』というのだから、空調が効いた宿泊可能な避難所の開設など、災害として国や自治体が対応していく必要があるのではないか」と指摘する。(喜多壮太郎)


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