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登山やハイキングなど山のレジャーは中高年層を中心に人気だが、警察庁の発表によれば2023年の山岳遭難発生件数は前年の3015件を上回る3126件で、統計を取り始めて以来2年連続最多だった。
遭難は自力で下山できなくなった状況を指し「街に近い低山でも起きます。さまざまなリスクについて知り、少しでも安全な登山を行いましょう」と兵庫県立加古川医療センター(兵庫県加古川市)の伊藤岳救急科部長は呼び掛ける。
山岳遭難者の年齢層
◇4分の3進んだ頃に注意
警察庁によると、23年の遭難者の年齢層は40歳以上が約8割、60歳以上が約5割と中高年層の多さが際立つ。遭難時の状態は道迷いが最も多く、次いで滑落、転倒と続き、骨折、捻挫、打撲などを負って救助を呼ぶケースが見られる。
「事故の発生は、1日の行程の4分の3前後進んだ頃に比較的多いというデータがあります」。ところがそのときの体調を聞くと、普段と同じ、もしくは非常に快調と感じている人が多いそうだ。「本人の感覚とは逆に、疲労の蓄積や集中力の欠如、登山という行為への慣れが生じているかもしれないことを、登山者自身が意識した方がよいでしょう」
◇予防策を多重に
事故を防ぐには、気象条件などを考慮して無理のない計画を立て、当日の状況を見てルート変更や中止を判断する。登山前夜はゆっくり休む。装備は行動内容や季節に合わせ、過剰な衣類や食料は持たずにザックを軽く小さくする。
また登山計画書を作成して家族などに渡し、登山口のポストにも投函(とうかん)する。ネットでの提出も可能だ。「登山計画書がないと遭難場所の見当がつかず、救助活動がスムーズに始まりません」
全地球測位システム(GPS)を利用した登山アプリの活用も検討するとよい。登山中の現在地や目的地までの予想時間が分かる他、ルートから外れると音声で警告してくれる。電波が届くエリアでは使用者の動きがサーバーに記録されるため、有事の際に捜索の目安となる。また、ピンポイントで気象情報を得られるサービスもある。
けがをしたときの応急処置は、水を通さない手袋を着用して行う。擦り傷や切り傷のような皮膚表面の傷には、流水洗浄を行う。飲める水は洗浄に使える。出血の際は手袋をした手で圧迫し、止血した後にガーゼなどで覆う。骨折や捻挫の場合は、痛みが和らぐような体位を取る。自力での行動継続が難しければ救助要請が必要だ。
「山は魅力的ですが、時に厳しい一面をのぞかせます。事故の予防策を多重に仕掛けておくほど、何かあったときに効率的な救助につながります」と伊藤部長は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/12/06 05:00)
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