治療・予防

五十肩治療の選択肢
~局所麻酔で癒着はがす(永野整形外科クリニック 永野龍生院長)~

 肩が痛くて腕が上がらない五十肩(肩関節周囲炎)。10年ほど前に登場した治療選択肢の一つで、局所麻酔を用いつつ癒着した組織をはがす「非観血的関節授動術(サイレントマニピュレーション=SMP)」について、永野整形外科クリニック(奈良県香芝市)の永野龍生院長に聞いた。

中高年に多く見られる五十肩

 ◇局所麻酔下で通院治療

 中高年、特に50歳代に多く見られる五十肩は、加齢により肩関節を構成する骨、軟骨、靱帯(じんたい)、腱(けん)などが変性し、周囲の組織に炎症が起きるのが原因とされる。

 「肩を動かすときだけでなく、安静にしているときや夜間にも痛みが生じる炎症期、次第に痛みは軽減するが肩の可動域が狭くなる拘縮(こうしゅく)期、痛みが和らぎ肩の動きが少しずつ改善する回復期と進みます。2~3年で症状は自然に軽快しますが、この間は日常生活に影響を及ぼします」と永野院長。

 特に拘縮期では、肩関節の動きを滑らかにする肩峰下滑液包(けんぽうかかつえきほう)や、関節を包む関節包(かんせつほう)が癒着。腕を上げたり、曲げながらひねったりする動作が困難になるといい、「凍結肩」と呼ばれる。

 従来、凍結肩には、入院して全身麻酔を行い、癒着した部分をはがす治療が行われてきた。実施できる医療機関はまだ多くはないが、通院治療で局所麻酔により行うSMPが、現在では治療選択肢に加わっている。

 ◇夜間痛あれば受診を

 SMPは、首にエコーを当て、首から肩関節の動きを支配する神経を見ながら麻酔注射を打ち、麻酔が十分に効いてから、医師が腕をゆっくりと全方向に動かし、肥厚、短縮した関節包をはがしていく。翌日から数カ月間、リハビリを行うのが一般的だ。

 保険診療で行えるが、あくまで選択肢の一つで、「五十肩なら誰にでも行う治療法ではありません」。同クリニックでは、〔1〕夜間の痛み〔2〕前方および横方向への腕上げが約120度以下〔3〕腕を脇に付け「小さく前へならえ」のようにして手のひらを上に向け、肘から先を横に広げた角度が約30度以下―などの基準を設けている。

 重度の骨粗しょう症患者などは骨折のリスクがあり、適用されない。一方、糖尿病患者は五十肩の症状が表れやすく、基準を満たせばSMPは適用される。

 「当院では事前に細かい問診を行い、解説動画を視聴してもらいます。痛みの対応は医師である私が、リハビリは理学療法士が担当します。患者さんには約3カ月のリハビリ通院と自宅でのリハビリをしっかり行う意欲が必要です。夜間痛があれば、整形外科を受診してください」と永野院長はアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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