早期診断・治療が重要
~アルツハイマー型認知症(総合東京病院 羽生春夫・認知症疾患研究センター長)~
厚生労働省によると、認知症の患者は2030年に約523万人になり、22年時点の443万人から8年間で約80万人増えると推計されている。総合東京病院(東京都中野区)認知症疾患研究センターの羽生春夫センター長は「早期に診断して適切に対処すれば、進行を遅らせることが可能です」と話す。

アルツハイマー型認知症
◇脳が萎縮
認知症のうち、アルツハイマー型認知症が6~7割を占める。「脳にアミロイドベータ(Aβ)という異常なタンパク質が蓄積するなどして、神経細胞が正常な加齢よりも速いペースで減っていきます」。Aβは、記憶や生活機能の障害が表れる20年ほど前から蓄積し始め、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)、認知症の軽度、中等度、重度と症状が進む。
「現在の医学では認知症の進行を完全に止めることはできず、遅らせることが目標です。その鍵は早期診断ですが、初期は加齢によるもの忘れとの境界があいまいなこともあります」
専門医が問診、認知機能検査、画像検査を総合的に評価すれば、的確な診断が可能だという。画像検査には、脳の萎縮を見るMRI、Aβの蓄積を見る陽電子放射断層撮影(PET)などがある。
◇新薬が登場
新たな治療として、脳内のAβを除去する初の新薬「レカネマブ」が23年12月に、2剤目の「ドナネマブ」が24年11月に発売された。レカネマブは2週に1回、ドナネマブは4週に1回の点滴で病気の進行を遅らせ、自立した生活の期間を延ばすことができると期待されるという。重い副作用としては、点滴に伴う発熱、頭痛などの反応、脳のむくみや出血が報告されている。
これらの薬の対象は、アルツハイマー病によるMCIや軽度の認知症で脳にAβの蓄積が確認された人に限られる。その点でも早期診断が重要となるため、「もの忘れが気になったら、かかりつけ医に相談するか専門医を受診し、検査を受けてください」。
一方、「約束事を忘れてしまう」「物の置き忘れ、しまい忘れが増えた」といった異変に家族が気付いた場合、「本人には、健康診断として受診を勧めるとよいでしょう」と羽生センター長は助言する。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2025/03/25 05:00)
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