インタビュー

認知症高齢者が笑顔に=子どもパワーでQOL維持

 最近、健康との関係で関心を呼ぶ笑いは、認知症の高齢者にとっても大きな支えとなる―。ある小規模デイサービス施設での取り組みが、注目されている。5年目を迎えた利用者と子どもたちとの世代間交流だ。この試みを主導する認知症ケア研究所代表理事(獨協医科大看護学部教授)の六角僚子さんは「認知症の患者に対しても、笑いの効用はあります。子どもたちと接することで認知症のお年寄りが笑顔になり、生活の質(QOL)の維持につながっています」と強調する。

 ◇保育園を併設


 茨城県水戸市酒門町にあるデイサービスセンター「お多福」。古民家を使った施設はどこか懐かしく、優しい雰囲気に包まれている。利用者15人の平均年齢は80.7歳で、要介護度は平均2.3、認知症の高齢者が9割を占める。約500平方メートルの敷地内に、保育園「お多福キッズガーデン」が併設されている。

 「おじいちゃん、おばあちゃん、おはようございます」。月曜日から土曜日まで、お多福に、キッズガーデンに通う子どもたちが元気良く入って来る。ハイタッチをしたり、膝に乗ったり。お年寄りの方もうれしそうに笑顔を見せる。六角さんは「子どもたちから、『ミラクルパワー』をもらっているのです」と話す。

 デイサービスセンター統括管理者でキッズガーデン園長の高橋克佳さんは「保育園には0歳児もいます

が、そういう子どもを除けば、ほぼ全員がお多福に来ます」と言う。ある男の子は、お年寄りの名前を全部覚えている。「おじいちゃんやおばあちゃんの出席を取るんですよ」。スタッフもびっくりすることがある。体操を始める時、この男の子が「はい、息を吐きます」と音頭を取ると、利用者全員が体操を始めるという。「子どもの言うことだから聞くのだと思います」

 1日に8回ほど、散歩に出掛ける利用者がいる。スタッフが連れ添うと、歩く速度を上げてスタッフを困らせることもある。しかし、「お散歩に行こうよ」と誘った子どもが先に立つと、それを見守るようにゆっくりと歩いてくれた。「どれ、着せてやるべ」。七五三の時には、アルツハイマーのおばあさんがきちんと着物を着せてあげる。「早くお参りに行くべ」と、自分から神社に行こうとした。

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