インタビュー

認知症高齢者が笑顔に=子どもパワーでQOL維持

 ◇交流の有無で差

 六角さんは「認知症の高齢者でも子どもたちと接すると表情が変わり、笑顔になります」と指摘する。六角さんの研究でアルツハイマー型認知症の高齢者について、保育園の子どもたちと交流している10人と子どもたちとの交流がない10人を2年間、比較調査した。その結果、交流のある高齢者の方がQOLを維持できていることが分かったという。

 六角さんたちが2012年に立ち上げたキッズガーデンは定員23人。月に1回、保護者とお多福の利用者、それに近所の高齢者も参加する運動会などのイベント「お達者クラブ」も開催されている。いわば、3世代間の交流だ。ここでも高齢者の笑顔が絶えない。

 子どもたちへのインセンティブとなるアイデアも考えた。キッズガーデンだけで通用する通貨「オッタ」だ。例えば、掃除をしたら1オッタ、入浴する高齢者の背中を流してあげると2オッタもらえる。昼食は2オッタで食べることができる。ただ、六角さんは「それ以上に大切なことがある」と話す。「夏休みの宿題を手伝ってもらったり、危ないことをして叱られたりする。子どもたちは愛情をもらっているのです」

 子どもたちの側も、自分で学び、対応している。ある母親は息子からこんな話を聞いて感心したという。「おじいちゃんとおばあちゃんはね、時々いろんなことを忘れちゃうんだ。だから、僕はいつも最初に自分の名前を言うようにしてるんだよ」

 ◇できることはたくさんある

 六角さんが常々口にするのは「認知症であっても、できることはたくさんある」ということだ。一人でカレーを作るのは無理。しかし、ジャガイモを洗ったり、皮をむいたりすることはできる。普段着ている洋服もたためる。「体で覚えた動作は再現可能です」(六角さん)。認知症がある程度進んでも、できることはある。それを「危ないから」とやらせないのは、患者にとり、かえってマイナスになる。

 高橋さんは「スタッフにとっても『こんなこともできるのか』と、発見の連続です。おじいさんとおばあさんがお餅をついた時にも、実は驚きました」と語る。もっと、認知症を分かってもらいたい―。高橋さんたちは劇団「いくり」を結成、認知症への理解を深める活動にも取り組んでいる。(鈴木豊)

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