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糖尿病と歯周病の関係
生活習慣の見直しを

 脳梗塞や心筋梗塞、網膜症、腎症、手足のしびれが、糖尿病の合併症であることはよく知られているが、最近、歯周病もその一つであることが分かってきた。高野歯科医院(東京都足立区)の高野直久院長は「糖尿病が進行している人は歯周病の治療が長引きますし、逆に歯周病の治りが悪い人には糖尿病予備軍がかなりの割合でいます」と指摘する。

 ▽治ってもすぐ再発

医科歯科連携は始まったばかり

 血糖値が上昇して糖尿病になると、体内の水分が減少して口の中が乾燥する。その結果、免疫力が低下し、唾液中の糖分が高くなって歯周病菌が繁殖しやすくなる。高野院長は「糖尿病の薬を勝手にやめて歯周病の治療を長引かせたり、治ってもすぐ再発したりするケースが増えてきました」と話す。

 一方で、歯周病が糖尿病を悪化させることもある。歯を支えている歯周組織が歯周病菌に感染してしまうと、炎症を引き起こすサイトカインと呼ばれるタンパク質が分泌される。サイトカインの一つの「TNF―α」は血糖値を下げるインスリンの働きを妨害する。そのため、歯周病になると高血糖になり、糖尿病を悪化させることになる。

 糖尿病から歯を守る

 歯周病と糖尿病の関係は、まだ広くは知られていない。このため、医師と歯科医師が連携して、糖尿病の発症や進行を抑えようという取り組みが始まっている。歯科医師が歯周病患者の糖尿病を見つけ総合病院などに紹介する、かかりつけ医が患者に歯科検診を促し、歯周病の早期発見につなげるといった試みだ。

 一部の歯科医では、患者の口の中を清潔に保つだけではなく、血糖値の急激な上昇を防ぐ効果があるとされるかむ回数を増やす指導をすることによって、糖尿病の防止につなげようとしている。

 歯周病は生活習慣病であり、患者自身も予防に取り組むことが大切だ。高カロリーの食事の取り過ぎや不規則な生活、睡眠不足、ストレス過多、喫煙は糖尿病だけでなく歯周病をも引き起こす。高野院長は「糖尿病から歯を守るには食生活はもちろん、生活習慣全体を見直していくことが必要です」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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