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放射線治療は、手術や抗がん剤治療と並ぶがん治療の3本柱の一つで、最大の利点は体への負担が少ないことにある。国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)放射線治療科の中村直樹医長は「がんは今や不治の病ではなく、共に生きる時代です。患者さんの生活の質(QOL)の観点から考えても、放射線治療の役割はますます重要になります」と強調する。
▽がん細胞にダメージ
放射線治療とは、X線などを患部に当てて、がん細胞の遺伝子にダメージを与え、がんが増えないようにしたり、死滅させたりする方法だ。手術のように切除する必要がなく、臓器をそのまま残すことや、手術が不可能ながんでも治療することが可能になる。
放射線治療は日本でも増加傾向
中村医長によると、日本での放射線治療の普及は、欧米諸国に比べて大幅に遅れていたという。その背景には、原爆などによる放射線に対するネガティブなイメージや、日本人には胃がんなど手術が適したがんが多かったことがある。米国ではがん患者の66%が放射線治療を受けているが、日本では25%にとどまる。
最近では、日本でも放射線治療を受ける患者が増加傾向にあるという。中村医長は「高齢化でがん患者自体が増えていることに加え、乳がんや前立腺がんといった放射線治療に適したがんも増えているためです」と説明する。
▽よりピンポイントに
放射線治療の進歩は目覚ましい。例えば、従来は、がんが複雑な形状をしていると、周囲の正常な組織を避けながら放射線を当てるのが難しかった。しかし、最近、普及しつつある「強度変調放射線治療(IMRT)」は、さまざまな方向から放射線を当てる際、放射線の強さに強弱をつけることで、正常組織に当たる放射線の量を減らしつつ、がん細胞には十分当てることを可能にした。
また、「陽子線治療」は、X線よりも放射線を当てる場所をより明確に区分けできるので、正常組織への影響を大幅に抑えられる。陽子線治療は小児がんについて保険適用となっている。
中村医長は「放射線治療の進歩が、がん患者が治療後も以前と変わらない生活を送ることを可能にしてくれます」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2018/11/29 06:00)
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