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猫などの哺乳類や鳥類を宿主とするトキソプラズマ原虫=用語説明参照=は、繁殖の過程で人間にも寄生することがある。健康な成人なら寄生・感染しても約8割は症状が出ず、発病しても発熱や筋肉痛など軽い症状が数週間続いて回復し、その後は抗体が形成され、免疫を獲得する。
しかし、妊婦が初めて感染してしまうと、低い確率だが原虫が胎盤を通して胎児にも感染し、水頭症やてんかん、運動障害などを引き起こす先天性トキソプラズマ症を発病させてしまう。妊娠後に寄生されたかどうかが重要な意味を持つ。二度目に感染しても免疫ができているので、ほとんど重症化はしない。かつて「犯人」扱いされた猫は主な感染源ではなく、むしろ加熱が不十分な肉料理などへの警戒が必要だ。
猫が犯人扱いされた時代も
◇年間1000~1万人が感染
「研究者による調査で、妊婦がトキソプラズマに寄生されたことがあるかを示す抗体の保有率は2~15%。ただ、この中には妊娠前から免疫を持っている人も含まれている。妊娠中の初感染率は0.13%とされている。年間に1000人から1万人の女性が妊娠中に初感染し、放置したまま成長後に症状が出る事例も含め年間130人から1300人、先天性トキソプラズマ症にかかった新生児が生まれる試算になる」
三井記念病院で長期間、トキソプラズマ症の診療に携わり、現在、埼玉県ふじみ野市でミューズレディスクリニック(産婦人科)院長を務める小島俊行医師は、こう説明する。その上で、「妊婦が服用することで、寄生虫の増殖を抑えて発症を抑制する治療薬も2018年に保険適用された。私は保険適用前から長年、ほぼ同じ効果の薬を患者の負担で投与してきたが、治療を受けている妊婦がトキソプラズマ症の子を出産した例はない」と話し、心配であれば積極的に検査・治療を受けるように勧めている。
感染源として妊婦が警戒する必要がある肉料理は少なくない
◇安心のためには精密検査
問題はトキソプラズマ抗体の検査法だ。現在、抗体の有無を確認するだけの検査が妊婦検診に組み込まれている医療施設は半数といわれている。費用は1000~1500円だ。しかし、抗体がいつ出現したか、つまりトキソプラズマが寄生を始めた時期を特定するには、より精密な検査が必要。費用も自費で1万5000~2万円かかる。
それでも小島院長は「心配する必要があるのは精密検査で初感染の疑いがあると分かった人だけで、それ以外の人は安心してよい。初感染でも服薬治療を受けるだけで先天性トキソプラズマ症発生のリスクは大きく減らせる」と検査のメリットを強調する。「同じように胎児に影響が出る先天性風疹症とはこの点が違う。胎児にまで寄生虫がたどり着かなければいい」と言う。
(2019/01/06 06:00)
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