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陰嚢(いんのう)が腫れて痛くなる病気の中でも「精巣捻転症」は最も緊急を要し、受診や診断が遅れると精巣を失う危険が高まる。慶応義塾大学病院(東京都新宿区)泌尿器科の浅沼宏准教授は「思春期の男子に発症しやすく、親に言い出せずに受診が遅れることがあります。日ごろから精巣捻転症の存在を知っておく必要があります」と語る。
恥ずかしがらずに早期に受診を
▽6割以上が思春期に
精巣は、陰嚢の中に左右一つずつあり、表面の一部が「精巣鞘(しょう)膜」と呼ばれる薄い膜で覆われ、陰嚢内に固定されている。男性ホルモンや精子を作っていて、精巣に血液を送る血管や精子の通る精管を包む「精索」が、鼠径(そけい)部へと伸びている。
精巣捻転症は、この精索が突然ねじれ、精巣に血液が流れなくなる病気だ。夜間や早朝に発症することが多く、陰嚢に急な強い痛みと腫れが生じ、吐き気や嘔吐(おうと)を伴うこともある。新生児にも多いが、全体の60~70%は思春期に発症し、ピークは13~14歳だという。「夏よりも冬に発症しやすく、右よりも左の精巣に多いという特徴があります」と浅沼准教授は説明する。
本来、精巣の一部だけを覆っているはずの精巣鞘膜が、生まれつき精巣全体を覆っていると、精巣が釣り鐘の舌(ぜつ)のようにぶらぶらと不安定になる。その状態で成長期に精巣が急に発達すると、何かの拍子にねじれてしまうのだという。構造的な異常は遺伝しやすいので、近親者に精巣捻転症を起こした人がいる場合は要注意だ。
▽両側の精巣を固定
一番の問題は、恥ずかしさから受診が遅れてしまうことだ。血液が流れない時間が長引くと、精巣の組織が死んでしまう。浅沼准教授は「症状が出てから、おおむね6~8時間が目安といわれています。受診までの時間が延びるほど、回復が難しくなります」と指摘する。
診断で少しでも精巣捻転症が疑われると、緊急手術になる。陰嚢を切開してねじれを戻し、再発しないよう縫合し固定する。正常な側にも起こり得るため、手術は両方の精巣に行うのが一般的だ。
精巣は片方があれば大丈夫だと思われがちだ。しかし、浅沼准教授は「精巣が片方だけの人は、両方備わっている人に比べ精子の数が少なく、将来的に不妊症のリスクが高まります」と注意を促す。
医療側がいくら緊急対応の体制を整えていても、受診までに時間がかかっては元も子もない。浅沼准教授は「今後は、学校の保健教育での啓発活動が必要です」と強く訴えている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
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