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カビの一種である白癬(はくせん)菌(水虫菌)が爪の中に侵入して発症する爪白癬。爪水虫ともいわれ、日本人の10人に1人が罹患(りかん)しているという身近な病気だ。近年、治療の選択肢が拡大し、患者の生活スタイルや好みに合わせて薬が選べるようになった。東京女子医科大学(東京都新宿区)皮膚科学教室の常深祐一郎准教授に、爪白癬の特徴や治療のポイントについて聞いた。
爪白癬の治療に用いられる抗真菌薬(処方薬)
▽足の水虫を放置すると菌が侵入
爪白癬は、足の水虫(足白癬)を長年放置することで、足の裏に繁殖した白癬菌が爪の中に入り込んで発症する。いったん爪に入り込むと、白癬菌の巣になってしまう。
爪白癬を放置して進行すると、爪が分厚くなり、変形して靴下や靴が履きづらくなったり、爪切りができなくなったりする。
さらに、常深准教授は「免疫力の低下した高齢者などでは、足白癬や爪白癬から白癬菌が拡散し、胴体や四肢、顔、頭などが白癬菌に侵される『体部白癬』『頭部白癬』になります。また、糖尿病の人では足白癬で皮がめくれた部分や爪白癬の厚い爪が食い込んだ傷からばい菌が感染し、足の組織が壊死(えし)し、指や足の切断に至る場合もあります」と説明する。
▽新たな内服薬が登場
爪白癬の治療では、足白癬も同時に治療することが重要となる。足白癬は外用薬で治療する。爪白癬では内服の抗真菌薬が主流で、多くの人は爪が生え変わる1年前後で治る。
以前からあるテルビナフィンとイトラコナゾールという内服薬は、定期的に採血を行い、副作用の発症の有無を確認しながら治療する。肝臓の状態が悪い人には使えず、イトラコナゾールは他の薬との飲み合わせにも注意が必要だ。
2014年には、国内初の爪白癬の外用薬エフィナコナゾール、16年にはルリコナゾールが登場し、内服薬が使えない人でも治療が可能になった。ただ、硬い爪の中に入り込んだ白癬菌まで薬が届きにくいため、治療期間が1年以上と長期に及ぶ上、中等症以上では完治は難しい。軽症患者や内服薬が服用できない人の治療薬という位置付けだ。
さらに、18年4月には、内服薬としては約20年ぶりにホスラブコナゾールが保険適用となった。服用が3カ月間と、短期間で済むのが利点である。
常深准教授は「自分の生活に合う薬剤を選択して治療をしてほしい。爪白癬は市販の外用薬ではまず治りません。また、爪白癬にならないうちに足白癬を治しておくことも重要です」と強調する。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/03/10 07:00)
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