こちら診察室 きちんと治そう、アトピー性皮膚炎

第2回 アトピー性皮膚炎、治すための「3本の柱」
~炎症抑える治療の基本とは~ 野村有子・野村皮膚科医院院長

 ◇副作用を避けるためにも上手に使おう

 このような副作用が取りざたされた結果、アトピー性皮膚炎に苦しむ患者の中には、ステロイド外用薬を使用したくない、という患者がいます。

 ステロイドの内服薬(飲み薬)で起きる副作用を、外用薬のケースと混同している誤解もいまだにあります。患者の不安を逆手に取り、効果の証明されていない民間療法に引き込む「アトピービジネス」が横行してしまいました。

「塗る量も大切です」と野村有子院長。適量と言われるのが人さし指の先端から第1関節部までの「ワン・フィンガー・ユニット」

「塗る量も大切です」と野村有子院長。適量と言われるのが人さし指の先端から第1関節部までの「ワン・フィンガー・ユニット」

 これは、私たち皮膚科医が正しいステロイド外用薬の使い方を丁寧に指導してこなかったことにも、一因があると思っています。

 アトピー性皮膚炎の治療をめぐっては、新しいガイドラインが2018年に制定され、きめ細かな治療の道しるべができました。時代はまさに変わったのです。

 この指針に沿って、ステロイド外用薬についても副作用を起こさずに、上手に使っていくことこそが、皮膚科医の本来の役割だと思っています。

 それでは、ステロイド外用薬を使用する際のポイントを三つにまとめます。

 一つ目は、「どこに何を塗るのか」です。

 症状のひどいところには、効き目の強いランクの薬を使用します。逆に、顔や外陰部の皮膚や小児の皮膚は薬の吸収が多く副作用が出やすいため、弱めのランクの薬を使用しますが、症状がひどいときには短期間、強い薬を使用することもあります。

 部位によってランクの異なる薬を使い分ける場合は、間違わないように塗ることが大切です。

 ◇塗る順番も守り、たっぷりと

 二つ目は「塗る順番も大切」ということです。

 「塗る量も大切です」と野村有子院長。適量と言われるのが人さし指の先端から第1関節部までの「ワン・フィンガー・ユニット」
 効き目の強い薬を塗った指で弱い薬を塗ると、指に残っていた強い薬も混じって、肌に付いてしまいます。強さの違うものを使う場合は、必ず弱い薬から塗りましょう。

 三つ目は「塗る量も大切」ということです。

 よく適量といわれるのは「ワン・フィンガー・ユニット」。通常の塗り薬用のチューブ(口径5㍉)から薬を押し出した時、「人さし指の先端から第1関節部まで」の長さになる約0・5㌘を指す言葉です。

 これは、成人の手のひら大2枚分、体表面積の2%分に相当します。5㌘チューブ1本で手のひら20枚分、体表面積の20%分になります。

 感覚的には、塗った部分の薬が光って見える程度、ティッシュをその部分にのせた場合はティッシュがペタッとくっつく程度の量が適切といわれています。

 ほんの少しの量を広範囲に刷り込んで塗っている例も多く見受けられますが、量が少ないと効果も落ちます。「たっぷりべったり! やさしくのせる感じ」で塗ってください。(野村皮膚科医院・野村有子院長)

 野村 有子氏(のむら・ゆうこ)

 1961年岩手県生まれ。慶応義塾大医学部卒。同大助手などを経て、98年に野村皮膚科医院を開業。さまざまな皮膚疾患を治療し、スキンケアのきめ細かな指導を行う。雑誌やテレビなどの取材も受け、啓発活動に積極的に取り組む。(了)





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