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睡眠時無呼吸症候群の治療
~いびきの改善~ 【第8回(最終回)】
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に何回も10秒以上の呼吸停止がある病気です。10秒以上呼吸が止まることを無呼吸と言い、平均して1時間に5回以上の無呼吸があると、この疾患を考えます。
◇症状と原因

1時間に5回以上呼吸が止まると…
ほとんどの場合、いびきを伴います。頻回の呼吸停止で熟睡できず、日中起きている時に異常な眠気を催し、それに伴い集中力低下やだるさを感じます。周囲の人から「いびきがうるさい」と指摘を受けることも多いでしょう。また、不眠やうつ状態を引き起こすこともあります。
睡眠時無呼吸症候群のタイプは、閉塞(へいそく)性、中枢性、混合型に分けられます。閉塞性が最も多いタイプです。空気の通り道である上気道が狭くなるために起こります。主な原因は肥満や小さい顎、鼻の奥にあるリンパ組織アデノイドの肥大です。中でも肥満は大きな原因の一つで、生活習慣と密接な関連があります。
中枢性は脳疾患、神経疾患、心臓疾患などにより無呼吸を起こします。混合型は両者の混合です。
◇合併症
頻回の無呼吸によって睡眠時の慢性的な低酸素や日中の眠気のストレスが生じ、自律神経の不具合につながります。また、高血圧、脳卒中、心筋梗塞などの虚血性心疾患の発生を増加させることが分かっています。糖尿病、高脂血症を合併しているケースも多く、突然死につながることも考えられます。
睡眠は人間が生活する上で非常に重要な役割を果たしています。これが阻害されたことによる影響は計り知れず、上記の合併症のみならず、さまざまな疾病発現のリスクとなります。
◇検査~治療
睡眠時無呼吸症候群の診断を確定するには検査が必要です。夜間の睡眠を調べなければならないため、終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査をします。睡眠時の脳波や呼吸状態などの詳しいチェックのため、1泊の入院となります。事情により入院できない場合は、精度は劣りますが自宅での簡易検査も可能です。
ここでは、最も多いタイプの閉塞性の治療について触れます。根本治療と対症療法に分類できます。
原因を取り除くのが根本治療です。肥満であればダイエットが必要です。鼻腔(びくう)が狭かったりへんとうが大きかったりすれば耳鼻科での手術が、顎が小さかったり舌が大きかったりする場合は口腔(こうくう)外科での手術が、それぞれ適用されます。
CPAP治療に使う装置
現れた症状に応じる治療が対症療法です。最初に選択されるのは経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)です。鼻に装着したマスクから圧力をかけた空気を送り込み、気道を広げて無呼吸を防止します。メリットは改善効果が高いことでしょう。デメリットは夜間、マスクを付けっ放しで空気が送り込まれるために息苦しさを感じてしまう点です。慣れるまでの時間が必要な場合が多いようです。
マウスピース治療も対症療法の選択肢の一つです。口腔内装置(OA)治療と言われます。ただ、全患者の使用に適しているわけではなく、CPAPが不向きで、かつ軽~中等症の場合に専用の特殊なマウスピースが適応されます。
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(2025/04/10 05:00)
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