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睡眠時無呼吸症候群の治療
~いびきの改善~ 【第8回(最終回)】
◇何科を受診すべきか?
睡眠時無呼吸症候群を診察する診療科は多くあります。検査診断のことを考えると、まず、内科や呼吸器内科、循環器内科、耳鼻咽喉科、精神科など医科診療科に相談してみてください。
最近は、睡眠時無呼吸症候群の専門外来を開設している病院も多く、事前に調べてから受診すればスムーズでしょう。しかし、大きい病院には紹介状が必要であり、まず近所のクリニックを受診してください。対応困難な場合は、専門病院への紹介状を書いてくれると思います。
歯科医院の場合、どこでも睡眠時無呼吸症候群の治療をしているわけではありません。目安として「〇〇歯科口腔外科」や標榜(ひょうぼう)科目に歯科口腔外科がある施設がよいでしょう。または、かかりつけ歯科に相談し、そこで治療をしていなければ紹介状を書いてもらうことはできます。
◇マウスピース治療
いきなり専用のマウスピースを作ってもらうことも可能ですが、歯科で保険適応のマウスピース治療を受ける場合は、医科診療科の紹介状が必要になります。紹介状がなければ自費診療になり経済的負担が大きくなってしまいます。医科診療科で検査を受け、睡眠時無呼吸症候群の診断と重症度を確認してからの方がよいでしょう。

気道を広げるマウスピース
マウスピースとはどんな物でしょうか。思い浮かぶのはボクサーが試合中に使うマウスピースでしょうか。確かに呼び名は同じですが、目的が違います。ボクサーの場合、顔面を殴打された時に顎や歯を守るために装着します。
閉塞性へのマウスピース活用の目的は、狭くなった気道を広げることです。下顎を前に出すことで気道が広がりますので、上下の顎にマウスピースを装着し、下顎を前に出した状態を固定します。ボクサーのマウスピースと違い、厚みのあるマウスピースを口内に入れて就寝することになります。初めは違和感が強いと思いますが、次第に慣れることがほとんどです。
◇根本治療と対症療法の組み合わせ
睡眠時無呼吸症候群にはいびきだけではなく、前述したように突然死などさまざまな恐ろしい合併症があります。また、本人が無呼吸に気付かない場合も少なくありません。私たち歯科医師は、毎日患者の口腔内を診て仕事をしており、睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は積極的に治療を勧めています。
対症療法での無呼吸の改善は大切ですが、根本治療として肥満、運動、食事、メンタルバランスといった生活習慣の改善が大きく関わっています。最も効果的な治療は、根本治療と対症療法の組み合わせだと思います。治療を医者任せにせず、自分で改善する思考と行動が必要な病気と考えます。
◇健康と生活の質向上に欠かせない口腔外科
口腔の健康は全身の健康と密接に関連しています。睡眠時無呼吸症候群だけでなく歯科口腔疾患は、放置しておくと心疾患や糖尿病などの病気のリスクが高まるため、早期の治療が不可欠です。
つまり、歯科口腔外科は口腔の健康だけでなく、生活の質を向上させるために欠かせない分野と言えます。専門的な診断と治療を通じ、全身の健康を守ることができるのです。患者の方々がより良い未来を手に入れるお手伝いができれば幸いです。(了)

角田智之(つのだ・ともゆき)
歯科医師・歯科医師臨床研修指導医・日本選択理論心理学会認定選択理論心理士。明海大学卒業後、日本大学医学部歯科口腔外科学教室、久留米大学医学部口腔外科学教室などを経て、2008年に福岡市で「つのだ歯科口腔クリニック」(現在は「つのだデンタルケアクリニック」)を開設した。
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(2025/04/10 05:00)
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