教えて!けいゆう先生
筆者プロフィル
筆者プロフィル
医師・医学博士。2010年京都大学医学部卒業。外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、内視鏡外科技術認定医、感染症専門医、がん治療認定医など。「外科医けいゆう」のペンネームで医療情報サイト「外科医の視点」を運営し、開設3年で1000万PV超。各地で一般向け講演なども精力的に行っている。著書に「医者が教える正しい病院のかかり方」(幻冬舎)、「すばらしい人体 あなたの体をめぐる知的冒険」(ダイヤモンド社)など多数。
病気や症状に関する情報をインターネットで調べる人がますます増えています。しかし、ネット上の医療情報は間違いだらけです。間違った情報を信じ、適切な治療を受けられず、病状を悪化させてしまう人はたくさんいます。
私はこれまで、間違った情報にだまされ、医学的根拠の乏しい治療に傾倒し、目の前から去って行った多くの患者さんたちを見てきました。私が日々の診療で痛感するのは、「診察室の中だけでは彼らを助けることはできない」ということです。さまざまなテレビ番組、書籍、そして何よりインターネット。患者さんたちは、病院の外で膨大な量の間違った医療情報に暴露されているからです。
私たち医師は、病院に来ない人を助けることはできません。しかしインターネットを使って正しい医療情報を多くの人に届けることができれば、状況は変わるかもしれない。
時事メディカルは、医学的根拠に基づいた、正しく信頼性の高い情報を日々みなさんに提供しています。私は一介の医師の立場から、皆さんのお役に立てる情報を届けることで、その一翼を担いたいと考えています。(山本健人)
医師と患者の間には医学知識の格差があります。しかし、この格差は、患者が理解することが難しい専門的知識だけではありません。簡単な言葉で伝えれば、比較的容易に理解できる知識も多いのです。
特に高齢者はこの格差が大きい傾向にあり、「知らない」ためにせっかくの医療が十分に活用できないケースも見受けられます。高齢者が医療機関に通院・入院する際は、家族の協力も欠かせません。そこで、本書は高齢者の病気に対する考え方や、高齢者特有の問題にスポットを当てながら、高齢者とその家族のための知識を紹介しています。
飲み薬より点滴の方がよく効く? 薬の基本的な知識
前回の記事で、飲み薬と点滴の違いについて書きました。
・飲み薬より点滴の方が効果が高いとは限らない
・重い病気の方が点滴の回数が多いとは限らない
というのが、前回ご紹介した知識ですね。
では、「同じ成分で、内服と点滴のどちらの製剤もある」という場合、何を根拠に選択しているのでしょうか?
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言い換えれば、飲み薬と点滴の、それぞれのメリット・デメリットとは何なのでしょうか?
これも薬の種類によってさまざまですが、ごく簡単な一般論を述べてみましょう。
◇飲み薬のメリットとは
まず飲み薬の最大のメリットは、何といっても体に針を刺す必要がないことでしょう。
医療従事者の力を借りることなく、「患者さん自身が自分に投与できる」のが飲み薬の強みです。
「仕事の合間に薬を投与する」といったことも、飲み薬なら楽々できますから、日常生活の制限が少なく済みます。
一方、点滴のメリットは、量の調節がしやすいことです。極端な例を挙げると、「AとBとCの三つの薬を毎日10錠ずつ飲んでください」と言われても、なかなか難しいでしょう。水だけで満腹になってしまいそうです。
点滴なら、これが簡単にできます。必要な成分の製剤を血管内に注入すればいいからです。
翻って考えれば、量の調節の制限が大きいことが飲み薬のデメリットと言えます。
◇点滴のメリットとは
点滴のメリットは他にもあります。
「一つの薬を24時間かけてゆっくり微量ずつ投与する」という微妙な調節が可能です。薬の種類によっては、「たった1滴」が大きな効果を持つものもあります。
「1時間に1ミリリットルずつ」というように、ごく微量ずつ体に薬を注入できるのも、「点滴ならでは」の強みです。
また、点滴なら、飲み薬にありがちな「飲み忘れ」の心配がありません。点滴は、投与のタイミングを全てプロに任せる治療法だからです。
例えば、「自宅で厳密に8時間おきに薬を飲む」よりも、「入院中に8時間おきに薬を点滴してもらう」方が簡単で確実です。
投与されている間、患者さんが眠っていても構わないのです。
◇疑問があれば尋ねてみよう
医師は、患者さんの病状や必要な薬の種類に合わせて、点滴の薬にするか飲み薬にするかを選びます。もちろん、これら以外にも、座薬や貼付薬など薬の剤型はさまざまにあります。
「なぜこの方法が選ばれたのだろう?」と疑問に思ったときは、ぜひ担当の医師に尋ねてみてほしいと思います。(了)
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山本 健人(やまもと・たけひと) 医師・医学博士。2010年京都大学医学部卒業。外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、内視鏡外科技術認定医、感染症専門医、がん治療認定医など。「外科医けいゆう」のペンネームで医療情報サイト「外科医の視点」を運営し、累計1200万PV超を記録。各地で一般向け講演なども精力的に行っている。著書「すばらしい人体」「すばらしい医学」(ダイヤモンド社)はシリーズ累計23万部。「医者が教える正しい病院のかかり方」(幻冬舎)、「患者の心得」(時事通信)ほか著書多数。
(2024/05/01 05:00)