新型コロナウイルス関連検査

 新型コロナウイルスは核酸のうちRNAしか持っていないウイルスです。DNAはPCRでふやして検査することができますが、RNAしかないウイルスではPCRで調べることができません。そこで、RT-PCR(逆転写後PCR)という方法を用いてRNAをいったん人工的にDNAにしたのちにPCRをする方法がとられています。PCR法は感度も特異度も高いので感染を知るうえできわめて有用ですが、特殊な検査機器が必要なこと、結果が出るのに3時間程度かかるなどの問題点もあります。
 抗原検査はウイルスの表面のたんぱくがあるかどうかを調べる方法です。RT-PCRはほんのわずかの遺伝子をふやして検査できるのに対して、たんぱくはふやすことができないため感度が劣ります。そのため、ウイルス量がたくさんある感染症状のある場合に用いられます。また、症状があって陰性であった場合は数日後に再度検査で確認が必要です。いっぽうで抗原検査はインフルエンザ抗原検査と同時におこなうことも可能で10数分で結果が得られる利点があります。症状、目的に応じて検査方法を選ぶ必要があります。
 抗体検査は自費あるいは研究目的でおこなわれるものです(2024年4月現在)。ワクチンの効果をみたり、過去に感染したかどうかをある程度知ったりすることができます。しかし、他人にうつしてしまうかどうか、重症化するかどうかなどはこの検査からはわかりません。

■検査方法
 鼻咽腔から採取するものがもっとも正確です。唾液では唾液中にさまざまな菌や分泌物が含まれているためPCR反応が進まない場合もあります。このため唾液検査で陰性となっても感染していないとはいえません。

■基準値:陰性(-)

(執筆・監修:国際医療福祉大学大学院 臨床医学 教授〔臨床検査医学〕 下澤 達雄)