良性骨腫瘍〔りょうせいこつしゅよう〕

■骨巨細胞腫
 骨巨細胞腫(こつきょさいぼうしゅ)は良性の原発性骨腫瘍とされていますが、再発率が高く、また肺転移をきたす場合があることなどから、中間悪性腫瘍としてとらえられています。10歳代中ごろから40歳代に多く、大腿(だいたい)骨、脛骨(けいこつ)の膝(ひざ)関節近くに多く発生しますが、そのほか上肢の骨にもみられます。

[症状]
 発育はゆっくりですが、疼痛(とうつう)、腫脹(しゅちょう)、関節運動の制限などの症状が出ます。わずかな外力が加わることで骨折(病的骨折)を起こすこともあります。

[診断]
 X線検査で、骨端部に偏在性に嚢包(のうほう)状の骨透明巣としてみとめられ、いわゆる泡沫像(soap bubble appearance)という特徴的な像を呈します。確定診断は病理組織検査に委ねられます。CTやMRIは病変部のひろがりを検索するのに有用です。


[治療]
 手術により腫瘍の切除をおこない、その骨の欠損には骨移植術を追加します。骨の代わりに人工骨や骨セメントを使用することもあります。関節機能維持のために人工関節置換術をおこなう場合もあります。近年デノスマブというヒトモノクローナル抗体が治療に用いられるようになり、手術療法と併用されています。
 予後は一般に良好ですが、局所再発率が高く、まれに肺に転移する例もあり、術後の経過を観察する必要があります。

■骨嚢腫
 骨嚢腫(こつのうしゅ)は、腫瘍に似ていますが、腫瘍ではなく、骨の内部に嚢腫(ふくろ状の空洞)ができる病気です。多くは10歳代に生じ、大腿骨の近位(からだに近い部位)や上腕骨の近位にもっとも多く発生します。
 病的骨折(腫瘍などのなんらかの疾患が原因で骨の強度が不足して起こる骨折)を生じやすく、多くは骨折を起こし、痛みが出てはじめて見つかります。骨に対して嚢腫の大きさが増大する活動性の高い時期と、嚢腫の大きさに変化がない活動性の低い時期とがあります。活動性の低い時期では経過観察のこともありますが、骨折を生じた場合や活動性が高い時期では手術をします。
 手術は病巣を掻爬(そうは:内容をかき出すこと)し、その後空洞部分に自家骨移植や人工骨の充填をします。

■非骨化性線維腫(線維性骨皮質欠損)
 骨組織に発生する限局性の線維芽組織様の腫瘍細胞の増殖です。発育期の大腿骨遠位(ひざに近い部分)および脛(けい)骨のひざ近傍によくみられます。
 X線検査では、骨皮質に多房性の辺縁硬化像のある骨透明巣としてみられます。多くは無症状で偶然に発見されたり、または軽微な外力での骨折(病的骨折)を起こしたりして診断されます。自発痛や骨折があるときは手術が必要となることがありますが、通常は自然に治癒します。

■線維性骨異形成
 骨の腫瘍類似疾患に分類され、骨の発育障害の一種と考えられる疾患で、多発性のものと単発性のものがあります。
 半数以上が20歳未満に発生し、多くは大腿(だいたい)骨、脛(けい)骨に発生しますが、あらゆる骨に発生する可能性があります。成人になると病変の発育は停止します。軽微な外力で変形、骨折する場合があります。
 X線検査でのすりガラス様像という半透明な像が特徴的で、大腿骨近位に発生した場合には内反股(ないはんこ:外に向かう彎曲〈わんきょく〉)という変形が起こります。
 治療は、病的骨折と変形の予防のために病巣の切除、骨移植がおこなわれます。

■内軟骨腫
 手指骨、足趾(そくし)骨に生じることが多い、良性の骨腫瘍です。
 本来無症状で、多くは病的骨折を起こして見つかります。
 治療は腫瘍が小さく無症状のものは経過観察をすることもありますが、骨折を生じている場合は腫瘍を掻爬し、骨移植をおこないます。

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