悪性骨腫瘍〔あくせいこつしゅよう〕 家庭の医学

■骨肉腫
 骨肉腫は代表的な骨の悪性腫瘍です。日本では全国で年間200~300人の人が新たに発症しています。10~20代に発症することが多く、部位別ではひざと肩に多く発生します。

[症状]
 特有な症状はありません。局所の痛みとはれが最初の症状です。成長期の例がほとんどで、またひざに発生することが多いために、成長痛として安易にかたづけられてしまい、発見が遅れることがあり、注意が必要です。

[診断]
 X線検査では、初期にはあきらかな所見がないこともありますが、進行すると境界がはっきりしない骨の破壊像と、その周囲には特有な骨膜反応がみられます。これらの所見は骨髄炎とも共通するもので、鑑別がむずかしいこともしばしばあります。そのほかにCT(コンピュータ断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像法)、骨シンチグラフィなどの検査が必要です。
 血液検査では血清アルカリホスファターゼ(ALP)が異常高値を示します。ただし、子どもではもともと高値を示します(骨の成長のため)から要注意です。
 以上から骨肉腫を疑い、最終診断は腫瘍組織の一部を手術により採取し、病理検査で確定します(切開生検)が、これは腫瘍専門医がおこなうべき検査です。また、骨肉腫はしばしば肺に転移し、その有無は生命予後や治療方針決定に重要ですから、胸部のX線検査とCTは必須の検査です。

[治療]
 骨肉腫の治療は腫瘍専門医によりおこなわれるべき、高度な専門性を要する領域です。
 治療は、薬による化学療法と手術療法の併用療法がおこなわれます。手術は腫瘍用人工関節を用いた患肢温存療法がおこなわれますが、場合によっては切断術を選択せざるをえない場合もあります。近年の治療成績改善はめざましく、初診時に肺の遠隔転移がない場合には、5年生存率は70%程度と報告されています。

■ユーイング肉腫
 骨肉腫とともに代表的な子どもの悪性骨腫瘍(こつしゅよう)ですが、骨以外にもからだ中の軟部組織にも発生することがわかっています。大多数は20歳未満に発症し、大腿(だいたい)骨と骨盤に多くみられます。

[症状]
 炎症症状が強いのが特徴です。局所の痛み、はれ、熱感がいちじるしく、全身では体温の上昇がみられます。

[診断]
 X線検査では骨の破壊がいちじるしく、虫食い様あるいは浸潤(しんじゅん)性の破壊像で、また骨膜反応(骨髄炎)が顕著で、二重、三重に骨膜反応がみられるたまねぎ皮様(onion-peel appearance)像が特徴的です。CTやMRI検査(画像)は腫瘍の範囲を評価し、治療方針の決定に必須です。
 血液検査では白血球数の増加、貧血、CRP高値、赤沈値の亢進(こうしん)など炎症所見がみられ、骨髄炎との鑑別が必要になります。
 確定診断は腫瘍専門医による切開生検術によります。この腫瘍の発生には遺伝子異常が関与しており、病理検査でこの腫瘍に特徴的な病理学的形態と遺伝子異常の確認により診断されます。


[治療]
 この腫瘍も腫瘍専門医による治療が必要です。化学療法や放射線療法が有効で、手術療法との組み合わせで治療します。最近の報告によると、初診時遠隔転移のない場合の5年生存率は約70%です。

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